1本70円「ガリガリ君」の苦悩 アイスも軒並み値上げの中でいつまで耐えられるか

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値上げしなかった赤城乳業

 時事通信は6月10日、「ガリガリ君ソーダ箱値上げ=1本売りは76円維持-赤城乳業」の記事を配信した。

《赤城乳業(埼玉県深谷市)は10日、アイスキャンディーなど29品目を9~10月に値上げすると発表した。人気の「ガリガリ君ソーダ」は9月1日、7本入りの箱商品を税込み378円から410円に引き上げる。1本売り商品は「子どもたちに長く食べてもらいたい」(担当者)として76円で据え置く》

 なぜ、ガリガリ君で有名な赤城乳業が値上げを決断すると、世間は注目するのか。その謎を解く鍵は、同社の“経営姿勢”にある。

 日経ビジネスは2021年12月15日、「『ガリガリ君』安さ追求への執念 10円の値上げ、議論は2年越し」の記事を配信した(註4)。

 記事は2016年4月、赤城乳業がガリガリ君の値上げに際し、“お詫び広告”を出して話題を読んだことから始まる。

 25年間据え置いてきた60円を70円に値上げしたためだ。赤城乳業は日経ビジネスの取材に「10円値上げするために、2年以上も議論した。こんな会社は他にないだろう」と答えている。

尋常ではない“企業努力”

 同社ができるだけ値上げを避けてきたのは、苦い経験があるからだという。

《1979年、オイルショックの余波で当時の主力商品「赤城しぐれ」を30円から50円に値上げした。すると売り上げが激減。会社が危機にひんするほどの打撃を受けた。社内には「値上げは最終手段」という教訓が根付いた》

 更に、ガリガリ君の場合、《81年の発売当初から「小学生が気軽に買える」というコンセプト》を大切にしてきた。

《消費税導入の影響から91年に一度値上げしたものの、その後の25年間は60円を維持した。これを支えたのは地道なコスト改善の積み重ねにほかならない。2010年には、約100億円(註5)を投じて大量生産向けの新工場を建設。生産ラインの専用化による生産効率の向上や販売増により、上昇するコストを吸収し続けた》

 ここまで値上げを避け続けた企業が、とうとう値上げを決めたのだ。

 例えば9月1日出荷分からは、「ガツン、とみかん」(90ミリリットル)が140円から150円、10月1日出荷分からは「練乳最後まで赤城しぐれ」(100ミリリットル・スティックタイプ)が100円から110円という具合だ。

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