1本70円「ガリガリ君」の苦悩 アイスも軒並み値上げの中でいつまで耐えられるか

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企業理念との関係

 これほど厳しい状況でも、赤城乳業は9月まで値上げをせず、その後もガリガリ君の1本売りは価格を据え置く。なぜなのだろうか。

「テクニカルな面では、アイス業界は薄利多売です。そして、100万円の商品も、100円の商品も、基本的に物流と倉庫保管にかかるコストは変わりません。アイスや氷菓の場合、原材料の高騰は値上げで吸収できたとしても、物流やエネルギーコストは難しいものがあります」(同・開発マーケティング本郡)

 その上で、赤城乳業が“経営姿勢”として、値上げをできるだけ避けてきた歴史が加わる。

「昔、アイスは子供のおやつでした。ところが、長年、値上げせずに頑張っていると、かつてガリガリ君を買ってくれた子供が大人になっても買ってくれるようになります。値段が変わらないことで、『価格が昔のままで懐かしい』とか、『こんなに安かったんだ』と手に取ってくれるのです。値段を上げること自体は簡単です。しかし、今、ガリガリ君を買ってくれている小学生が40年後も買ってくれるためには、価格を据え置くべきだと判断しました。私たちの企業理念を踏まえた判断です」(同・開発マーケティング本郡)

夏は価格据え置き

 たとえ猛暑で売れに売れたとしても、値上げは9月からだ。赤城乳業にとっては我慢の夏になる。

「最悪の場合、減益減収は覚悟しています。今年の夏が会社の収益にどのような影響を与えるのか、注視しながら商品を提供していきたいと思っています。また、政府からは節電も要請されています。熱中症に気をつけるためにも、アイスや氷菓を食べていただき、健康に気をつけてもらえればと願っています」(同・開発マーケティング本郡)

註1:猛暑になるとアイスクリームが売れないってホント?(週プレNEWS:2013年7月22日)

註2:アイスクリームの謎 売れる気温、サンデーの語源(NIKKEI STYLE:2015年7月24日・小林明編集委員の署名原稿)

註3:アイス市場が低成長の日本で伸び続ける理由 「大人」や「冬」も取り込む戦略が奏功(東洋経済ONLINE:2018年5月20日・経済ジャーナリスト、経営コンサルタント、高井尚之氏の署名原稿)

註4:連載企画「貧しいニッポン」の第5回、同誌の橋本真実記者の署名記事。

註5:赤城乳業によると約150億円とのこと。

デイリー新潮編集部

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