肝臓・胆道・膵臓の「難治がん」との賢い闘い方6 真にあきらめない治療とは?

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ベスト・サポーティブ・ケアとは

大場:進藤先生の繰り返しになりますが、わが国の医療レベルは多くの医療者の献身と使命感の上に成り立っていることは本当で、他のどの国にもみられないプライスレスな価値観です。現状、お金さえ支払えば受けることができる夢の治療法も、うまい秘訣も存在しません。進藤先生レベルの手術を受けたいと思うと、他国であれば高額な手術費用が必要なわけですが、日本だと誰が手術をしても一律料金で、支払いの上限までが設定されている手厚い高額療養費制度もあります。米国のように治療費が払えなくて破産するような患者も国内ではまず聞いたことがない。だからこそ、難治がんやステージIVの患者さんは、自由に選択できる権利があるわけで、より専門的かつ真摯に向き合ってくれる医師、病院選びをしてほしいと思います。

進藤:そうですよね。この国では同一労働同一賃金など大嘘で、僕らなんて仕事に対する誇りとやりがいだけで生きてますからね(笑)。だからこそ、我々のこうした努力が多くの患者さんのサポートになってくれることを常に願っています。

大場:残念なことにともすれば荒稼ぎをしているような誤解をされやすい職種ですが、現場で真摯にプロフェッショナリズムを実践している医師らの志や使命感は崇高なものです。進藤先生のようなエキスパート外科医がそのうち絶滅しないようにしないとです(笑)。

 この回をまとめたいと思いますが、BSC(best supportive care ベスト・サポーティブ・ケア)という用語がありますよね。標準治療をすべてやり終え、積極的な緩和ケアが必要な対象を指すことが通常です。よくないのは、その言葉の使われ方が、医師サイドの治療への関心がなくなった場合の逃げセリフになっていることが多いことです。読んで字のごとく、ベストなサポーティブ・ケアを必要とする患者さんたちであるにもかかわらず、その意味とは裏腹にベストを尽くさなくてもよい扱いにされていることが少なくありません。

 進藤先生のこの回のメッセージを煎じ詰めると、真の「あきらめない」は、医療者サイドの視点からは、容易に患者さんを手放さないこと、そして治療成果によらず、患者に寄り添い続け人生をサポートすること、だと思います。一方、一人ひとりの患者さんには、転移しても、難治であっても、あきらめずに、希望をもって前向きにがんばってほしい、われわれふたりから心よりエールを送りながら序章を終えたいと思います。次回からは、専門的な治療各論について、一人でも多くの患者さんがベスト・プラクティスに繋がるための議論をしていきたいと思います。引き続きどうぞよろしくお願いいたします。

大場大 おおば・まさる 1999年 金沢大学医学部卒業、2008年 医学博士。2021年より東京目白クリニック(豊島区)院長。2009年-2011年 がん研有明病院。2011年-2015年 東京大学医学部附属病院肝胆膵外科 助教。2019年より順天堂大学医学部附属順天堂医院肝胆膵外科 非常勤講師も兼任。専門は、外科学、腫瘍内科学、消化器病学全般。書籍・メディア掲載も多数。

進藤潤一 しんどう・じゅんいち 2004年 東京大学医学部卒業、2012年 医学博士。2014年より虎の門病院消化器外科(肝・胆・膵)所属。2011年-2012年 米国MDアンダーソンがんセンター腫瘍外科。2013-2014年、東京大学医学部附属病院肝胆膵外科 助教。専門は、肝胆膵外科学、腫瘍外科学。特に肝臓外科領域の研究業績では世界の若きリーダー。医師向けの教育講演も国内外で多数。

デイリー新潮編集部

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