肝臓・胆道・膵臓の「難治がん」との賢い闘い方5 ステージIVと言われたらどうすればよいのか?

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大半を外科医が担ってきた

大場:なるほど、確かにステージIV=末期がん、ではないことは強調したいですね。ドラマや映画でもなにかと、「末期」というフレーズが使われやすいのですが、それは本当に差し迫ったかなり限定された時期を指すものです。ステージIVでも仕事を続けたり、ゴルフをしたり、普段通りの生活を快活に過ごせる方はたくさんいらっしゃいます。がんという言葉のイメージが、まだまだ社会では偏見や差別を生み出しているニュアンスがなくなりませんね。本人は大丈夫なのに、周りが「がん」という言葉の響きに構えてしまうというか……。

 進藤先生のいう「人生のサポート」という考え方は素晴らしいですね。ですが、言うは易く行うは難しで、主治医がみなそのような考え方をもって患者と向き合っているのかというと必ずしもそうではない。実際に治ることが難しい患者の場合、理屈のうえではサポーターの役割は腫瘍内科医となるわけですが、身近にいないことが多い。日本ではまだまだ欧米先進諸国と比べると、その数は不足しているようです。

 現状、「がん薬物療法専門医」という名称の資格が腫瘍内科専門医としての証となっていますが、専門医の偏在も問題だといえます。例えば、関東エリアでみると東京都251名、神奈川県85名、千葉県71人、埼玉県48名、茨城県15名、群馬県11名、栃木県11名、山梨県4名です(2022年4月時点 日本臨床腫瘍学会ホームページより)。

 東京都は多いとは言っても、ほとんどはがん専門のセンター病院や大学病院などに集中していますので、基本的にステージIVの患者さんは、目の前にいる主治医と信頼関係を築いていくほかありません。エキスパート腫瘍外科医である進藤先生からみて腫瘍内科医はどのように映っていますか?

進藤:歴史を紐解くとがんの治療は手術から始まりましたので、一人の主治医が最初から最後まで長く診ていくというスタイルが主流のわが国では、手術も抗がん剤治療も緩和医療も、その大半を外科医が担ってきたという歴史があります。私もここに来るまでは東大病院も含めてそうしたスタイルの臨床を長くやってきましたし、進行がんで初めから手術は無理というケースを除けば、多くの施設において外科医ががん診療の中心にいることが今でも多いと思います。

 偏った意見であることは承知で聞いていただきたいと思いますが、腫瘍内科という専門領域は日本ではまだ新しい分野であると思います。欧米と日本ではやはり臨床のスタイルが異なりますし、一人の主治医が長く面倒を見てくれる日本の医療の良さを崩してまで欧米のような完全分業制にする必要はないと個人的には考えています。腫瘍内科医は進行して手術ができない患者さんの化学療法 (抗がん剤治療) だけやっていればよいわけではなく、もっと診療の中心でがんの治療の舵取りをする立場にあるべきだと個人的には思います。そのために科の垣根を超えた連携を進め、腫瘍内科医ががん治療のリーダーとしてもっと活躍できる場を我々も整えていく必要があると思っています。

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