肝臓・胆道・膵臓の「難治がん」との賢い闘い方5 ステージIVと言われたらどうすればよいのか?

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世界の肝細胞がんのステージを決める立場として

進藤:我々が使っている「ステージIV」のニュアンスと一般の方が考える「ステージIV」のニュアンスとでは少しズレがあると感じることがしばしばあります。ステージIVというのは一般的には「治りません」という意味合いでとらえられることが多いですが、これまでの議論でも出てきたように、がんのステージとはがんの「進行度」の定義であって、「根治できる・根治できない」という意味ではないということを一般の方にはまず知っていただく必要があると思います。私は日本の肝細胞がんのステージを決めている委員会の委員であり、現在の世界の肝細胞がんのステージを決めている委員会の委員でもありますが、がんのステージというのはあくまで生存成績に基づいて決めているものであって、「治る・治らない」を基準に決めているわけではありません。どのがん種においてもステージIVでも治る人もいれば、ステージIVだから治らない人もいるわけです。

 私の専門領域でいえば、胆道がんや膵がんは患者さん全体で見ても生存成績が悪いので、これを予後によってステージIからIVまで分類した場合、胆道がんや膵がんのステージIVは他のがんに比べるとものすごく生存確率が低い患者さんばかりになります。ですから、これらのがんではステージIVの患者さんを治癒に導くことはかなり難しいということになります。

 一方、お話で出てきた大腸がんの肝転移に加え、神経内分泌腫瘍 (Neuroendocrine neoplasm; NEN 呼び名ネン)という特殊な腫瘍の肝転移、肝細胞がん(いわゆる肝がん)などは、手術以外にも有効な治療法が存在しますので、ステージIVの患者さんでも手術を含めた集学的治療によって根治や長期生存を達成できる方がいます。このようにステージIVでもがんの種類によってその予後は大きく異なり、「ステージIVのがん」とは「末期がん」と必ずしもイコールではないこと、がんの種類によっては進行がんでも治療による大幅な生存延長を期待できるケースがあるということは知っておいてほしいポイントです。

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