専門医が「高齢者こそ外出を」と語る理由 「行ったことのない場所」への旅行で前頭葉を活性化

ドクター新潮 健康 長寿

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 久しぶりに移動等の制限がなかった今年のGW。密になる場が多そうで怖い、と感じた人もいるだろうが、おびえて家にこもっているほうが、健康長寿から遠ざかってしまう。いまこそ外へ! 老年医学が専門の和田秀樹氏が健康増進するための心得を説く。

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 日本人の平均寿命は2020年の統計で男性81.64歳、女性87.74歳で、ご存じのように世界でもトップクラスです。

 しかし、だれもが願う健康長寿を、この数字が直接表しているかというと、残念ながらそうではありません。心身ともに健康でいられる「健康寿命」は19年の統計で男性72.68歳、女性75.38歳。平均寿命との差が、男性で約9年、女性で約12年あり、それは病気や認知症などでだれかに介助されながら生きる平均期間を表しています。

 充実した70代、80代をすごせるかどうかは、この期間をいかに元気で健康にすごせるかにかかっています。しかし、高齢者専門の精神科医として約35年間、6千人を超える高齢者を診てきた私は、いま心配でなりません。2年余りにおよんでいるコロナ禍を、いわれるままに自粛してすごした人と、同調圧力にもめげずに動き続けてきた人の間に、大きな差が開いてしまっているからです。

「外に出るな」という同調圧力を素直に受け入れてきた70代、80代は、家にこもるうちに足や腰が弱り、前頭葉も刺激を受けず、心身ともに衰えてしまった人が目立ちます。一方、安くて空いているので旅行に行きやすい、などと開き直ってすごした人ほど、いま幸せそうな表情をしています。

行ったことのない場所がおすすめ

 ワクチンの3回目接種を終えた人は、65歳以上にかぎれば87%に達しています。それにオミクロン株になってからは、基礎疾患をいくつも抱えていなければ、たとえ感染しても、さほど心配はいりません。それでも怖い人は、外に出ないほうがよほど怖いのだと肝に銘じていただき、どんどん外出することを勧めます。

 外出すると気持ちが浮き立つものです。こうして幸福感に浸ったり、太陽の光を浴びたりすると、「幸せホルモン」と呼ばれる神経伝達物質のセロトニンが分泌され、やる気や幸福感がさらに高まります。

 その際、前頭葉の刺激になるように、なるべく行ったことがない場所を選ぶことを勧めます。前頭葉は脳のなかで思考や感情、行動や判断をつかさどる、とりわけ重要な部位。高齢になると必ず萎縮しますが、使えば活性化します。楽しさを感じ、なおかつ強い刺激が与えられると、前頭葉へのよい刺激になります。

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