専門医が「高齢者こそ外出を」と語る理由 「行ったことのない場所」への旅行で前頭葉を活性化

ドクター新潮 健康 長寿

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コロナで亡くなる確率と、外出を避けて要介護になる確率

 日本人はどちらの害のほうが大きいか、あまりてんびんにかけてくらべません。しかし、免許の返納にしても、75歳以上が運転して、他人を死亡させる確率は1万分の1程度なのに対し、返納してしまうと6年後の要介護率は2.2倍に跳ね上がります。返納するリスクは桁が三つくらい大きい。

 同様に、自粛して外に出ない結果、要介護になる確率は、運悪くコロナに感染して亡くなる確率より、何桁も高いことを知ってもらいたいのです。

 自粛による悪循環は、確実に起きています。最近はウーバーイーツなどが発達し、外出しなくても済んでしまい、多くの人がそれを覚えてしまったのがまずいのです。また外出して日に当たらないと、セロトニンが分泌されないため、意欲が失われて、外出がさらにおっくうになるという悪循環に陥ります。

 コロナ禍以前から、家から出たがらない高齢者、デイサービスに行きたがらない高齢者はいました。でも、デイサービスにしても、最近は高齢者の扱いが上手なスタッフが多く、いざ行くと「楽しい」という感想になる人が多いものです。

 だから私は、行動療法の考え方を導入すべきだと考えています。とにかく行動を変えることから始めましょう。そうすれば気持ちはついてきます。

旅行に一緒に行ける友人

 さて、いったん旅行に出かけたら、欲張りになっていいと思います。よほど混んでいないかぎり、行きたい場所を貪欲(どんよく)に訪れましょう。ただ、たとえば香川県の金刀比羅宮を参拝するとして、785段の石段を登りきることができなかったとしても、「オレはダメだ」などと思わないことです。時間をかけてもいいと考え、ダメならあきらめることも大切です。

 気張るより、一見くだらない発見を楽しんだほうが、前頭葉が刺激されます。愛媛で「みきゃん」というゆるキャラにハマってみたり、おいしいソフトクリームを見つけたり。童心に返って安いものを大人買いし、孫への土産にするくらいがいいと思います。

 中高年までは一人旅もいいですが、70代、80代になったら、可能なかぎり人と連れ立ったほうが望ましいです。一つには、相手がいたほうがいろいろな場所に積極的に行く気持ちになるからです。もう一つは、喋る楽しみが加わります。コロナ禍で、喋ってはいけないかのように刷り込まれたかもしれませんが、相手が感染していなければ、連れ立っての旅になんら問題はありません。

 男性は、友人と一緒なら旅先でキャバクラやストリップにも入りやすいでしょう。性的な刺激を受けると、男性ホルモンが増え、若い気持ちを保てるし、筋肉量が増えてフレイルを予防できるなど、肉体にもよい影響が期待できます。

 異性でも同性でも旅行に一緒に行ける友人は、作っておくことを勧めます。

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