ウクライナ軍に提供される榴弾砲「M777」、砲弾「エクスカリバー」の強烈過ぎる破壊力 兵器の装備でもロシア軍は惨敗

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“改造戦車”の実力

「ウクライナ軍が使っている戦車は、ロシア製の『T-72』です。兵士が使い慣れていることもありますし、ロシア軍のT-72を相当に鹵獲(ろかく)したので、これも使えば戦力アップになります。その結果、反攻しようとするウクライナ軍も、押し戻そうとするロシア軍も、今回の侵攻で評価がガタ落ちしたT-72を中心に戦うという奇妙な状況になりそうなのです」(同・軍事ジャーナリスト)

 とはいえ、同じT-72であっても、やはりウクライナ軍のものとロシア軍のものでは、性能が違う可能性があるという。

「ウクライナ軍は、自軍のT-72が壊れたり、ロシア軍のものを鹵獲したりすると、チェコやポーランドに修理を引き受けてもらいます。両国とも東側諸国でしたから、今でもT-72を使っています。ところが、西側の部品を使うなど自分たちで改良し、T-72の性能を上げているのです。修理してウクライナ軍に戻す時も、同じような改造をする可能性があります」(同・軍事ジャーナリスト)

 繰り返しになるが、ウクライナ軍は圧倒的に兵員の数が足りない。だが、兵士の士気は高く、武器や装備の質は高い。

鍵を握るオデーサ

 一方のロシア軍は、兵員や戦車の数なら圧倒的に多い。だが、兵士の士気は低く、武器や装備の質は低い。輸送の問題も解決できず、最前線は物資の不足に苦しんでいる。

 こんな両軍が、遅くとも6月半ばには東部戦線で激突するわけだ。勝敗の行方を世界中が注視しているのも当然だと言える。

「ロシア軍はキーウ侵攻でも撃退されましたが、今回の東部戦線でも充分な戦果を挙げられていません。マリウポリも完全には陥落していないとも見られています。こうした状況から考えると、もしウクライナ軍が本格的な反攻を開始すると、ロシア軍が耐えきれなくなる可能性もあると思います」(同・軍事ジャーナリスト)

 鍵を握るのは、南部の要衝、港湾都市のオデーサ(オデッサ)だという。

 AFP・時事は5月11日、「オデーサに複数のミサイル攻撃 ウクライナ南・東部で戦闘続く」と報じた。既にオデーサは戦闘状態にある。

「ロシア軍がオデーサの陥落に成功すれば、重要な港湾都市を手に入れることになります。プーチン大統領にとっては、“戦果”を誇ることができます。一方、ウクライナにとってオデーサを失うことは、黒海へのルートを絶たれ、“内陸国”になってしまうことを意味します。対ロシアとの戦争という観点だけでなく、戦後の経済復興という点からも絶対に容認できません」(同・軍事ジャーナリスト)

停戦交渉

 ロシア軍は数が頼みだ。本来、両面作戦は戦力が分散するというデメリットが多い。だが、東部戦線とオデーサの両方に進軍すると、ウクライナ軍を二分させることができるというメリットがある。

「ゼレンスキー大統領も南部クリミアの奪還を掲げるなど、東部と南部の両面作戦に意欲を見せています。今後の戦況がどうなるのか、なかなか予測は困難ですが、ウクライナ軍のやるべきことははっきりしています。とにかく、優秀な装備でロシア軍に徹底的な損害を与えること。ロシア国内の厭戦気分を高め、停戦交渉の糸口を探ることが、第一目標になるのではないでしょうか」(同・軍事ジャーナリスト)

 日露戦争(1904~1905)でも、日本は日本海海戦で決定的な勝利を収め、アメリカの仲介でポーツマス条約を結ぶことに成功した。ウクライナでも同じことが起きれば、ひとまず世界が安堵するのは間違いない。

註1:ゼレンスキー氏「ハルキウを奪還した」マリウポリ製鉄所でも抗戦(FNNプライムオンライン:5月11日)

デイリー新潮編集部

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