ウクライナ軍に提供される榴弾砲「M777」、砲弾「エクスカリバー」の強烈過ぎる破壊力 兵器の装備でもロシア軍は惨敗

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平野部の戦車戦

 アメリカの政策転換を象徴するのが、「ウクライナ民主主義防衛・レンドリース(武器貸与)法」の成立だ。

「貸与法の成立で、武器供与の量が増えるだけでなく、迅速化も期待されます。この法律は第二次世界大戦でも成立し、連合国を勝利に導いた要因の一つとも言われました。ちなみに、この法律に従って当時のアメリカが援助したのは、ナチス・ドイツと戦うイギリスとソ連でした。それが今回、かつては支援したロシアを叩き潰すために使われるのですから、歴史の皮肉を感じさせます」(同・軍事ジャーナリスト)

 ウクライナ軍は東部戦線で本格的な反攻を行うと見られている。ゼレンスキー大統領は北東部にあるハルキウ州で、一部地域をロシア軍から奪還したと発表した(註1)。

「初期の攻防戦では、首都キーウ(キエフ)を中心とする市街地が戦場となりました。一方の東部は、広大な平野が多い地域です。ハルキウの近くにあるロシアのクルスクでは1943年、ソ連軍とドイツ軍の間で大規模な戦車戦が行われました。ウクライナ軍が東部で反攻を開始するためには、ロシア軍を圧倒するだけの火力が必要です」(同・軍事ジャーナリスト)

性能の差

 今、世界の軍事関係者は「榴弾(りゅうだん)砲」に注目している。北大西洋条約機構(NATO)に加盟する各国が、ウクライナに続々と榴弾砲を送っているからだ。

「榴弾砲は、一般の人がイメージする“大砲”に最も近いかもしれません。戦車砲の射程距離は最大でも5キロですが、NATOの155ミリ榴弾砲なら40キロ先の目標を砲撃できます。敵の戦車の弾が届かない安全地帯から攻撃できるわけです。155ミリ榴弾砲は、最も威力の強い火砲の一つです。集中砲火を浴びせた時の破壊力は凄まじく、たとえ戦車といえどもひとたまりもありません」(同・軍事ジャーナリスト)

 注意すべきは、「榴弾砲はNATO軍の秘密兵器ではない」という点だ。起源は16世紀に遡るとされ、ごく一般的な兵器だと言える。

 ロシア軍も、もちろんウクライナ軍も、榴弾砲を持っている。ウクライナ軍は東西冷戦下では東側陣営に属していた。そのため両軍とも、同じ152ミリ榴弾砲を配備している。

「ロシア軍の152ミリ榴弾砲は、NATO軍の155ミリ榴弾砲と、ほぼ互角の性能を持っている……ことにはなっています。しかし様々な面で、NATO軍の155ミリ榴弾砲のほうが、高性能だと言えるでしょう。例えば重量の問題です」(同・軍事ジャーナリスト)

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