胃カメラで「異常なし」でも4人に1人が発症? 「機能性ディスペプシア」の治療法、予防法

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どんな薬がある?

 FDと診断されれば、次の薬が処方されます。

 症状が胃痛や胃の焼ける感じでしたら、まずは胃液の分泌を抑える薬です。これには即効性があります。ガスターなどで知られるH2ブロッカーが最初の候補となります。FDでも、形の上で慢性胃炎の診断がつけば処方されます。もし器質的疾患である逆流性食道炎との診断があれば、より強力な、PPIと呼ばれるプロトンポンプ阻害薬が使えます。

 また副交感神経のムスカリン受容体への信号伝達を遮断して胃酸を抑えるガストロゼピンや、胃液を抑えつつ胃の運動は促進するアシノン、胃液を抑えつつ知覚神経に作用して知覚過敏を和らげるプロテカジンという薬もあります。

 症状が胃もたれや食後の早期膨満感などなら、胃の働きが落ちていたり、胃の膨らみが十分でなかったりする可能性が高いので、消化管機能改善薬を出します。それにはガスモチンという薬がありますが、FDで唯一保険適用されているアコファイドが処方されると思います。効果が出るまでにある程度時間はかかりますが、胃の機能が低下した状態は改善されて楽になっていきます。改善が見られたら、調子の悪い時だけ飲めばいい薬です。

市販薬でも改善しなければ……

 これらが効かない場合は、六君子湯(りっくんしとう)といった漢方薬が選択肢になってきますが、セレキノンという薬もあります。これは1980年代あたりから使われてきた古い薬で、若い医師だと知らない人も多いのですが、胃の働きが弱い時には活動を促進し、活発で過収縮の時には鎮める非常に優れた薬です。薬価も安く、副作用も少ない。十二指腸にも作用するので、最初から使う薬ではありませんが、FDの中でも十二指腸液が胃に逆流してくるケースでは特効薬になります。

 またFDにはストレスが深く関与するので、抗不安薬、抗うつ剤が処方されることもあります。

 まずは市販薬を飲んでみて、症状が改善しなければ、受診するということでもいいかもしれません。もっとも消化性潰瘍や胃がんの場合でも、市販薬で痛みが取れてしまうことがありますから、どこかのタイミングで内視鏡検査を受けていただきたいです。

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