胃カメラで「異常なし」でも4人に1人が発症? 「機能性ディスペプシア」の治療法、予防法

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若者は胃痛、高齢者は胃もたれ

 つまり新しい病気ではなく、これまでも存在していた病気です。でもそれが増えてきた。市販の薬を飲んで改善してしまう人もいますし、病院に来られない方もいますから、日本人全体のデータを出すことは難しい。ですが、健康診断で病院に来られた方に、先の「ローマIV」という国際基準にある項目を入れた問診票を書いていただくと、だいたい10~20%が該当します。

 また、胃の調子が悪い状態が長引いて病院を訪れる人では、半分以上の方がFDに当てはまります。

 一般に女性に多いといわれますが、私自身の経験からすると、男女差はあまりありません。また若い人に多いという話もありますが、症状に違いはあれど、どの世代にも同じくらいの割合で患者がいます。ただ、若い人に胃が痛いという症状が多く、高齢になればなるほど、胃がもたれる症状が多いという印象はあります。

「ローマIV」の定義では、症状が6カ月以上前に始まり、かつ直近の3カ月を含むものとされています。若い人に多い「痛み」という症状であれば、すぐに病院に行きますから、それで若者にFDの診断が増えている面はあると思います。

最大の原因はストレス

 ではFDの胃には、どんなことが起きているのでしょうか。

 1970年代くらいまでは、胃の動きが悪くなっていることが原因ではないかと考えられていました。その後、胃酸の関与や知覚異常(知覚過敏)などが、更に昨今は十二指腸を含めた機能異常も病因として考えられています。このようにFDはいろいろな原因で起きている病気で、しかも症状から診断した症候群ですから、患者さんの訴えもさまざまです。胃の動きが悪くなったり、逆に過収縮したり、胃酸の状態がおかしくなっているケースもあります。

 もし胃酸過多なら、それを抑えればよく、また胃の運動機能が落ちていれば、その改善薬を飲めばいい。しかし胃酸を抑えても、運動機能を改善しても、症状が良くならない方が半分程度いるのがFDです。

 その原因は、不規則な生活や暴飲暴食、過度のアルコール摂取、喫煙など多岐にわたります。その中でも特にストレスの関与が大きいと指摘されています。

 発症には、自律神経の乱れが大きく関係します。消化管に強く影響するのは、主に副交感神経で構成される迷走神経です。胃酸分泌を亢進させたり、胃の運動を活発にさせたりするのがこの神経です。

 脳からの命令で、交感神経が強く働くと胃液の分泌は減少し、副交感神経の働きが強まると分泌は増加します。ものを食べた時は、副交感神経が強まり、胃酸が分泌されるのが正常な動きです。でも自律神経が乱れてしまうと、空腹時にも胃液が出てしまいます。本来は休むべき時に、活発に動いてしまうのです。

 そうなると、食べ物と中和されていない酸性の胃酸が十二指腸へと流れていきます。十二指腸はpHの低いもの(強酸性)が来ると困りますから、ブレーキをかけようとして、胃液を胃に留めてしまうのです。

 これによって更なる運動の異常が起こり、再び胃で空腹時に胃酸が分泌されたり、「負のスパイラル」に陥ります。

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