胃カメラで「異常なし」でも4人に1人が発症? 「機能性ディスペプシア」の治療法、予防法

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空腹期を作る

 最後にFDの予防について触れておきます。大事なことは、自律神経を整えることです。それには何より、生活習慣を守ることが大事です。現代社会において、ストレスを避けるのは非常に難しい。ですが睡眠不足や食べ過ぎ、過度な喫煙、食べてすぐ寝るなどの行為は改めることができます。

 食品で一番気をつけるべきは、脂肪です。ファストフードを始めとして、いまの食環境には脂肪が溢れています。脂肪は胃の中にあるうちは問題ないのですが、十二指腸に行くと脂の受容体があり、そこからCCKというホルモンが出ます。これが胃の運動能力の低下を引き起こすのです。脂肪の摂取で胃もたれになるのはそのせいです。

 またカフェインなどの刺激物をとりすぎるのもよくありません。カフェインも胃液分泌、胃の運動を亢進させる作用があります。

 一方、ヨーグルトの「LG21乳酸菌」を摂取するのは、自律神経改善に役立ちます。ストレスを感じると、交感神経が優位になり、唾液に含まれるアミラーゼの濃度が高くなります。反対に副交感神経が優位になると唾液水分量が増加し、その濃度は低くなる。ですから自律神経の乱れを測るには、唾液アミラーゼの濃度を見るのが簡単かつ確実な方法です。唾液中のアミラーゼの濃度が高いとストレスを感じていることになります。「LG21乳酸菌」ヨーグルトを1日1個、3カ月間摂取した方は、摂取しない方に比べて濃度が有意に下がっていたのです。つまり、摂取によって自律神経が整えられたのです。現在のところ、他のヨーグルトではその効果が確認されておらず、科学的に証明されたのは「LG21乳酸菌」だけです。

 こうした食生活に気をつけながら、決まった時間に朝昼晩の食事をするのが重要です。それはつまり、胃を休ませる空腹期を作るということです。胃を休ませることで、次に動く活力が湧いてきます。

 そしてもう一つ付け加えるなら、日常的に腹式呼吸の深呼吸をしてみるといいでしょう。お腹が膨らむよう意識し、1日に10回くらい、10秒かけて深呼吸します。これによって食道と胃の間の括約筋が鍛えられますから、胃液の逆流に悩む人には効果があると思います。

春間 賢(はるまけん)
川崎医科大学総合医療センター特任教授、淳風会医療診療セクター長。1975年広島大学医学部卒。広島大学附属病院、四国がんセンターなどを経て88年広島大学医学部講師。独ハノーバー医科大学、米メイヨークリニックなど海外留学後、2001年広島大学病院第一内科助教授、同年川崎医科大医学部教授。15年同特任教授。

週刊新潮 2022年2月17日号掲載

特別読物「胃カメラでは異常なしでも…4人に1人が発症!? 原因不明の『胃痛』『もたれ』『膨満感』 現代病『機能性ディスペプシア』とは」より

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