「44歳夫」が今も思い出すキャリア妻の不倫を察した瞬間 そしてタクシーの中で2人がしていたコト

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妻とタクシーに乗っていたのは…

 ところが3年前のこと。翌日は娘の遠足で、雄浩さんは「おいしいお弁当を作る」と約束していた。ところがなぜかおにぎりに巻く海苔が切れている。買い置きがあったはずなのに見つからなかったので、雄浩さんは近所の深夜もやっているスーパーへ行こうと家を出ようとした。そのとき、タクシーが家の前に横付けになった。

「あわてて門の陰に身を潜めたんです。ドアがなかなか開かない。義父が趣味で植木をやっているのですが、その隙間から覗くと車の中でかなり激しいラブシーンが繰り広げられていて。その後、降りてきたのは男性、そのあとから妻が降りた。そしてふたりはさらに抱き合ってキスを交わした。街灯に照らされて舌が絡み合うのまで見えた。体が離れ、男が車に乗り込みました」

 かすかに見えた男の顔は、彼の直属の上司だった。結婚したころは妻と自分の先輩だった人だ。その後、他部署に移動になり、数年前から上司として戻ってきていた。幹部候補とも言われているエリートである。

「自分の上司と妻が関係をもっているって、なんだか悪い夢でも見たような気持ちになりました。ただ、妻が車をじっと見送ったあと門を開けようとしていたので、僕はあわててさらに植木の陰にうずまくった。妻は家の中に入っていきましたが、大きなため息をつくのが聞こえました」

 雄浩さんは妻が玄関を入っていくのを確認、しばらくしてようやく立ち上がってそうっと門を開け、スーパーへと歩いていった。

「どうやって海苔を買ったのか、他にも何かを買ったのか、そのあたりのことは何も覚えていないんです。ただ、スーパーでアイスクリームを買って外で食べながら帰ったのだけは覚えている。どうしてふだん食べないアイスを買ったんでしょう。真冬で寒かったのに」

 時間をかけて帰った気がすると彼は言う。家に戻ると妻の姿はなかった。すでに寝室に引きあげたようだ。

「今のは見なかったことにしよう。見なかったのではなく、なかったことだと決めました。それからお弁当の下準備をして自室に引き上げた。でも寝られなくてね、そのまま朝を迎えて、ひたすらお弁当作りに集中しました。ついでに妻と自分の弁当も作って。こんなときでも妻の弁当を作ってしまう自分が、おめでたいなと思いましたね」

 起きてきた妻は、「そうだ、遠足だったよね」といつもと変わりない調子で言った。いつもごめんね、ありがとうと言う妻の肌がキッチンの窓ガラス越しに映えていた。

「今日もきれいだねと思わず言うと、妻は照れたように笑いました。そうか、あいつと寝ていたのかと僕は腹の中で毒づいていたけど、もちろん言葉にはしませんでした」

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