社内不倫していた繊細な夫 彼女と別れた今、「妻と愛人」へ不信感を抱いてしまう理由

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自宅で“鉢合わせ”

 料理教室に通い始めて3ヶ月がたったころ、その日に作ったものを持って帰ると玄関に女性ものの靴があった。

「茉利奈ちゃんの靴に似てる。そう思いました。まさかとリビングに入っていくと、奈美絵と茉利奈ちゃんがソファにくつろいでお茶を飲んでいたんです。茉利奈ちゃんは立ち上がって『急にお邪魔してすみません』と頭を下げました。奈美絵が『さっきうちの部の若手と電話で打ち合わせしていたら、茉利奈さんの話が出たのよ。また営業に戻ってきてほしいねって。それで急に会いたくなって誘っちゃったの。今日はうちにおいしいものがあるからおいでって』と笑っていました。女性ふたりは落ち着いていたけど、僕はもう心臓がバクバク音を立てていて……。茉利奈ちゃんがよく平気でうちに来るものだとびっくりしました」

 その日、潤さんは動揺のあまり皿を2枚割った。茉利奈さんは潤さんが持ち帰った料理を食べ、さらに奈美絵さんに勧められるままに宅配でとったピザもおいしそうに食べた。そのうち娘も帰宅し、世代の違う女性3人が仲良くしゃべり続けていた。潤さんは早々に自室に引き上げたという。

 茉利奈さんからは〈いいご家族ですね〉とあとからメッセージが来た。本当は家に来てほしくはなかったが、妻が誘ったのだから茉利奈さんに文句を言うわけにもいかない。

「次に会ったとき、なぜか僕も茉利奈ちゃんも燃えました。茉利奈ちゃんは嫉妬したと言いながら、その嫉妬が快感を呼んだみたいで。女って怖いなというのが僕の本音です」

 そのころから茉利奈さんの体が貪欲に変わったと潤さんはため息をついた。それから2年、このコロナ禍でも在宅ワークの日に出社だと言って茉利奈さんの部屋に行ったりしながらふたりは互いを求め続けた。

妻が「茉利奈さん、結婚するみたいよ」

 そしてこの夏、潤さんは茉利奈さんを突然、解き放ったという。

「もう限界でした。妻に嘘をつくのも、茉利奈ちゃんに会い続けるのも。会えば会うほど好きになるけど、それは家庭の崩壊が近づくだけ。娘が悪気なく僕の携帯を見ようとしたとき、思わず強く叱責してしまったんですよ。その瞬間、もう無理だと思った。茉利奈ちゃんには謝るしかありませんでした。泣いている彼女を部屋に残してドアを閉めたときのやるせない気持ちがずっと後を引きました」

 ところが今月に入ってから、奈美絵さんが「まだ内緒だけどね、茉利奈さん、結婚するみたいよ」と突然言った。そして妻は言い放ったのだ。

「あなたも大変ね」

 潤さんは卒倒しそうに驚きながら、「な、なにが?」と返すのが精一杯だった。

「妻は、『同じ部署の若い女性が結婚するんだから、いろいろ大変でしょう』とさりげなく言ったんですが、僕は妻が茉利奈ちゃんとの関係を知っていると思いました」

 茉利奈さんが本当に結婚するのかどうか、今のところはまだわかっていない。そして妻が夫の不貞を知っているのかどうかもわからない。ただ、潤さんは自分の「純愛」をふたりの女性に汚されたような気がしてならないのだという。

「こんなに愛していたのに、僕の気持ちはもてあそばれただけだったのか。妻も知りながら素知らぬふりをしていたのか。女性はわからない。妻も恋人も信用できない……」

 最後は小声でつぶやいた。

亀山早苗(かめやま・さなえ)
フリーライター。男女関係、特に不倫について20年以上取材を続け、『不倫の恋で苦しむ男たち』『夫の不倫で苦しむ妻たち』『人はなぜ不倫をするのか』『復讐手帖─愛が狂気に変わるとき─』など著書多数。

デイリー新潮取材班編集

2021年11月10日掲載

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