2人の女性を行き来してきた“不倫男”に突然の「がん」宣告、彼が頼った相手は?

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 日本では「重婚」は禁じられているが、婚姻届を出していなければ、実質的にふたつ家庭があっても誰にもわからない。そして世の中には、そんなふうに「うまく」やっている男性もいる。ところが、すべてうまくいくかといえば、そんなことはないわけで……。

 藤本良充さん(45歳・仮名=以下同)が、里佳さん(42歳)と“結婚”したのは15年前、30歳のときだった。大学時代に留学したため、彼が社会に出たのは25歳になってから。だがその持ち前の器用さと優秀さで、入社した企業では「遅れてきたエース」と呼ばれていたそうだ。彼はそんな話を、おもしろおかしく話してくれた。笑顔がなんともかわいらしいタイプ。女性は安心して近づきそうだ。

「いやあ、なかなか友だち以上になれないですよ。安全パイだと思われていたら口説けないでしょ。口説いたら友だちをなくすことになる。男女というより人間同士のつきあいがしたかったから、20代後半はそういう葛藤がありましたね」

 だが、「大好きになった」里佳さんには、1年以上にわたって毎日のように自分の気持ちを切々と訴えた。彼女が根負けして結婚してくれたと彼は言う。

「だけど実は婚姻届を出していないんです。うちの両親は離婚していて、僕は母と祖母と叔母、大人の女性に囲まれて育ちました。里佳の両親も離婚しているんですが、彼女は親戚をたらい回しされて、非常につらい環境で育ったそうです。高校を中退して働くようになり、その後、成人してから高卒認定をとったという苦労人。そんなことから、ふたりとも結婚というものに対してはどこか後ろ向きだったんですよね」

 婚姻届を出さないままに同居を始めた。里佳さんも手に職を持っているため仕事を続けている。育った環境を決して卑下することなく、いつも明るく前向きな里佳さんを、彼はどんなときも支えていきたいと思って一緒になったのだという。

「子どもができたら、きちんと育てていくつもりでしたが、今のところは叶えられていません。そこは自然でいいと思っていました。ただ、里佳とはずっと仲良くやってきましたよ。大きなけんかをしたこともありません。里佳の休みに合わせて僕も休んで、よく一緒に旅行をしたり出かけたりしています」

 里佳さんは良充さんの母と叔母にもよく会いに行っているという。彼自身は、母との折り合いがあまりよくないため、祖母亡き後はほとんど実家に行くのを避けてきたのだが、里佳さんと母は相性がよかったようだ。

「自分は行かなくても、里佳から母と叔母の様子が聞けるのはありがたかった。でも里佳本人は、『あなたのために行っているわけじゃないの。私がお母さんに甘えたいだけ』って」

 彼女がいるから人生が楽しいと思えるようになったと、良充さんはしみじみと言った。

一方、起業を機に後輩女性と親密に…

 良充さんは6年前、学生時代から仲良くしている男友だちと起業した。それまで培った経験を生かして「成功したいというよりは、社会に還元したい気持ち」だったという。

「大きく儲かったりするようなことはありませんが(笑)、食べるのに困るわけではない。サラリーマン時代と収入は変わりませんね。でもやりがいは10倍アップしたと思う」

 起業当初、良充さんは前の会社で後輩だった香奈子さん(31歳)に一緒に働こうと声をかけた。ポテンシャルが高く、どんなときもあきらめない香奈子さんに、彼はどうしても新会社に来てほしかったのだ。だが彼女はイエスとは言ってくれなかった。確実な収入がないと、母子家庭の我が家では弟の学費が出せないといわれ、「ここにも家庭的に不運な育ち方をした人がいる」と感じた。

 起業してからも彼は、気になってときどき香奈子さんに連絡をし、ときには一緒に食事をした。香奈子さんもまんざらではなかったのだろう、「年の離れた兄ができたみたい」と喜んでくれた。

「僕、安全パイですから(笑)。でもそう言われちゃうとねえ、僕は彼女のこと、かなり本気でしたから。里佳とタイプが似ているようで似ていない。女性にはひとりひとり、本当に魅力がある。香奈子を見ていてそう思いました。弟さんへの愛情とか、お母さんへの思いやりとかが深いんですよね。僕とは違うし、里佳とも違う。香奈子のメンタリティとバイタリティにはいつも感心していました」

 そんなとき、香奈子さんの母親が病気になったと連絡があった。入院して手術を必要とするという。さすがの彼女も少し落ち込んでいた。

「いい病院に入院はできたけど差額ベッド代がかかるらしいんですよ。それも1日2万円近い。30日入院したらそれだけで60万ですよね。弟の学費もあるしとため息をついたので、オレが貸すよと言いました。そう言うしかない状況だったし、彼女にならあげてもいいというつもりでした」

 彼女は涙ぐんで頭を下げた。そしてきちんと借用書を作ってきた。

「いい女だなあと思いましたが、そこで口説くわけにはいかない。相手の弱みを握って口説くのは最低ですからね」

 その後、香奈子さんの母は無事に手術が成功して退院、予後もよく、1年後にはすっかり元気になった。彼女は1年で30万円ほどを返済してくれた。

「残りはあと2年かけて返しますねと彼女が言ったとき、それとこれとはまったく別の話なんだけど、僕、あなたのことが好きで、もう我慢できないんだと口が滑ってしまったんです。そんなこと言うつもりはまったくなかったのに……。すぐに『オレ、何を言ってるんだろう、ごめん。忘れてほしい』と謝りました。彼女、大笑いしたんですよ。こっちがびっくりするほど。そして『借金のカタにそんなことを言う人でないのは、私がいちばんよくわかってる。本当のことを言うと、私も藤本さんのことをだんだん男性として意識するようになってきたんです』と言ってくれて。うれしかった。もうその言葉だけでいい、何もしなくていいと思いました」

 3ヶ月ほどたったころ、彼女は突然ひとりで暮らし始めたと言った。

「借金完済していないのにごめんなさい、と。親戚が亡くなって所有していた小さなワンルームマンションが空いたんだそうです。遺族が香奈子に使ってもらってもいいと言っていると。実は僕も知らなかったんですが、香奈子たちは、母子3人で狭い2DKの木造アパートに住んでいたんですって。母親と弟が、『ねえちゃんが住めばいいよ』と言ってくれたそうで。彼女はそんな話をしながら、妙にねっとりとした目で僕を見ました。ただの後輩ではなく、“女”の目でした。ここで逃げるわけにはいかない。そう思いました」

 すでに引っ越しは済んでいる。見に来る? そう言った彼女の目はさらに妖しい光を帯びていた。そんな戦いを挑まれたら、断ることのできる男はいるだろうか。

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