米国は韓国を反人権・反民主国家と認定 バイデンは「従中」文在寅を乱打する

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「中国が支配する世界」に慣れ

――シン・ボムチョル氏は親米派なのですね。

鈴置:質問する記者も親米派で、「中国ではなく米国側に付こう」と強調する記事になっています。ただ、その理由が面白い。シン・ボムチョル氏は「我々の子孫の時代は深刻に悩むことになろうが、まだ、そうではない。軽挙妄動すれば棒で叩かれる」と語っています。

 現時点では米国の方が経済的に強いから、米国側にいるべきだ――との理屈です。記者も「米中どちらが優位か」ばかりを聞いています。要は、米国の方が強い間は米国側に居続けよう、との前提で議論しているのです。

 裏を返せば、中国の方が強くなればそっちに行こう、ということです。中国的な価値観の下で生きるのはまっぴらごめんだ、との思いはまったく見られない。

――韓国人は保守派でも「中国が支配する世界」に拒否感はないのですか?

鈴置:正面切って聞けば「米国が支配する世界の方がいい」と答えるでしょう。ただ、韓国人は「中国が支配する世界」には慣れている。新羅以降、中国の歴代王朝に朝貢してきたのです。

 2009年、本音を語ってくれる韓国の指導層の1人に「なぜ、韓国人は中国に立ち向かわないのか」と聞いてみたことがあります。答は「日本と異なり、中国との戦争で勝ったことがないから」でした。

「新羅が唐を半島から追い出した羅唐戦争(670―676年)では勝ったではないですか」と重ねて聞くと、「そんな大昔のことは意識に残っていませんよ」とさびしそうに笑ったのが印象に残りました。

大戦争の前には価値観訴え

 この聴聞会で明らかになったように、米国も「韓国の民主主義の後退」には気づいた。ただ多くの米国人はまだ、北朝鮮や中国にゴマをする左派政権が原因と見なしている。だから左派政権を叩くために「民主主義」を武器とした。

 しかしそれが左派の異質さのためではなく韓国の本質と知ったら、韓国を利用はしても「心許せる同盟国」のリストからは外すでしょう。

 米国は大戦争を戦う時は必ず、価値観を全面に押し出し仲間の結束を図ってきました。でも掲げる価値観として、西洋式の民主主義は万能ではないのです。

鈴置高史(すずおき・たかぶみ)
韓国観察者。1954年(昭和29年)愛知県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒。日本経済新聞社でソウル、香港特派員、経済解説部長などを歴任。95〜96年にハーバード大学国際問題研究所で研究員、2006年にイースト・ウエスト・センター(ハワイ)でジェファーソン・プログラム・フェローを務める。18年3月に退社。著書に『米韓同盟消滅』(新潮新書)、近未来小説『朝鮮半島201Z年』(日本経済新聞出版社)など。2002年度ボーン・上田記念国際記者賞受賞。

デイリー新潮取材班編集

2021年4月26日掲載

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