米国は韓国を反人権・反民主国家と認定 バイデンは「従中」文在寅を乱打する

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次は反米左派政権を選ぶな

――韓国への攻撃の狙いは?

鈴置:もちろん、純粋に「民主主義の破壊」への怒りがあったと思います。外交的な手練手管だけではないでしょう。

 ただ実利的な面からも、米国が対北ビラ禁止を何としても撤回させたいのは事実です。情報を流しこむことは北朝鮮の独裁体制を揺さぶる最高の手段だからです。だからこそ北朝鮮が嫌がり、北朝鮮の言いなりの文在寅政権が禁止したわけです。

 もちろん、韓国人に対し「文在寅政権は見限ったぞ」とのメッセージを送る狙いもあるでしょう。2022年3月の選挙で再び反米左派の大統領を選んだら米国はただではおかないぞ、と恫喝したわけです。韓国の保守系紙もそれに応え「米国の怒り」を大きく伝えているのです。

 それに対し左派メディアは「聴聞会の不当性」を訴える作戦に出ています。ハンギョレは聴聞会の前から社説「米議会の聴聞会では対北ビラ問題が正しく伝わるべきだ」(4月9日、韓国語版)で「証人が(保守派に)偏っている印象がある」と牽制していました。

「他人の言論の自由」には鈍感

――文在寅攻撃は成功しますか?

鈴置:分かりません。米国にうるさく言われれば、仮に正しい指摘だと思ってもプライドが傷つく韓国人もいるからです。1970年代―80年代に韓国の独裁や人権弾圧が米国から批判された際、韓国政府は「内政干渉」と反発し、国内からもある程度の支持を得ました。

 そもそも、対北ビラ禁止法に対する韓国内での評価は五分五分なのです。世論調査会社、リアルメーターが2020年6月10日に調べた結果、この法案に賛成する人が50・0%、反対が41・1%。賛成する人が少し上回っていました。

 民主化したといっても韓国人は、米国人ほどに「民主主義」に敏感ではない。韓国人も「言論の自由」を唱えますが、自分の主張を一方的に押し通す権利を要求しているだけです。「他人の言論の自由」を尊重しはしないのです。

 朝鮮日報に、韓国の民主主義の水準を示す興味深い記事が載りました。「米国から反人権・反民主国家と認定された韓国」(4月16日、韓国語版)です。

 姜仁仙(カン・インソン)副局長らが経済社会研究院のシン・ボムチョル・センター長に、韓国が外交的に進むべき道を聞いた記事です。

 まず、対北ビラ禁止法に関し、シン・ボムチョル氏は「国民が憤慨し阻止すべきことなのに、こんなことを米国から問題提議されるとは恥ずかしい」と述べています。

 米国から言われて初めて言論の自由の侵害と気づいた韓国人が多い、と告白したのです。韓国にも同法に反対の人はいましたが、主な理由は「北朝鮮の言いなりになるのは不愉快」ということでした。

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