全国のヤクザは過去最少の2万6000人、今後は“組”消滅の可能性で進む“二極化”

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半グレに“転職”

 暴力団を問題視する世論は年々強まっている。組員にとっては強い逆風であることは言うまでもない。更に反感を買うようなことは避けようというわけだ。

「2点目は、六代目山口組の神戸山口組に対する切り崩し工作が成功していることです。神戸山口組は絆會が離脱して弱体化しました。六代目山口組は、これを逃さず、神戸山口組の組長や組員の引き抜きを行い、かなり成功しています。しかし抗争を起こしてしまうと、引き抜き工作が水泡に帰してしまいます。それを避けるため、特に六代目山口組は組員にトラブルが起きても静観するよう厳命しているのです」(同・藤原氏)

 こうして3組のにらみ合いが続く中、傘下の暴力団はどこも収入源の減少に悩まされている。組員の離脱が止まらない理由だ。

「数年前には、半グレ組織への“転職”が目立ちました。バブル期ならいざ知らず、今の暴力団組員は質素な生活を余儀なくされています。カネ儲けにこだわる組員はヤクザを辞め、オレオレ詐欺などで儲けている半グレ組織に移ったのです」(同・藤原氏)

 そのブームも既に一段落しており、今は暴力団を辞め、堅気になる元組員が多いという。

「元組員を何人も取材しましたが、堅気になって活き活きしている人ばかりなのは印象的でしたね。特に神戸山口組の組員は、カネに背を向け、『打倒六代目山口組』のため生活苦にも耐えてきました。ところが、上層部が動くことはなかった。組織に心底から見切りをつけたからか、落ちつき先は多様です。関係の深い土建業や産廃業に飛び込んだり、親戚や友達が経営している会社に入社させてもらったり、本当に人それぞれです」(同・藤原氏)

二極化の可能性

 この動きは加速することはあっても、止まることはないそうだ。たとえ六代目山口組が神戸山口組に“勝利”したとしても、組員の“流出”は続くという。

 藤原氏が取材した、ある暴力団の幹部は、「今のような“組”がなくなるのは時間の問題だろう」と打ち明けた。

「この世からヤクザが消えることはない。だが、組は消滅するというのです。何しろ組長が組織の維持運営に悲鳴を上げています。上納金や組同士の付き合いのため必要なカネは月で100万円台に達します。これを稼ぐために覚醒剤の密売など非合法のシノギに手を染めなければなりません。しかし、組を解散させて“小規模のグループ”にスリム化すれば、組織を維持することができます」(同・藤原氏)

 暴力団の維持を諦めたヤクザたちは、どうやって生きていくのか。藤原氏は「反社会性をより先鋭化させるグループと、堅気に近づくグループの二極化が考えられます」と言う。

「例えば、違法薬物に依存する人がいる限り、密輸と密売のニーズは存在します。小規模な組織で地下に潜り、ハイリスクハイリターンの違法行為でカネ儲けしようというヤクザはいなくならないでしょう。その一方、組を土木や建設など正業の会社に業態変更する。それと平行して弁護士に頼めないようなトラブルを解決するといった、“地域の顔役”を裏で目指すヤクザも増えていくと思います。『困っている人を見たら助けなければならない』という本来の任侠道を実践しようというわけです」(同・藤原氏)

デイリー新潮取材班

2021年4月24日掲載

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