工藤会「トップ」に異例の死刑求刑 福岡県警のメンツを潰した4つの市民襲撃事件

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元警部銃撃事件

 第2の事件は2012年に発生した、福岡県警の元警部に対する銃撃事件だ。北九州市内の住宅街でミニバイクに乗った組員が、出勤途中だった元警部とすれ違いざま、拳銃で3発を発砲。太ももや腰など2発が命中し、全治1か月の重傷を負った。

 元警部は2011年春に退職するまでの33年間、工藤会の捜査を担当していた。99年の恐喝事件で田上被告が実刑判決を受けると、元警部が捜査に携わっていたことから、田上被告が報復を示唆したことがあったという。

 09年に元警部は破門された元組員と接触。その場で元警部は野村被告を呼び捨てにした上、「工藤会は一枚岩じゃなかろうが」などと話して情報を引きだそうとした。

 だが、元組員は情報提供を拒否。1、2週間後に北九州市のゴルフ場で野村被告が元警部に「こそこそ外で人と会いよるらしいな」と言った。

 翌10年には自宅の家宅捜索を受けた田上被告が、元警部に電話で「わしの家をメチャメチャにしてくれたらしいやないか」と抗議。2被告は「元警部の殺害もやむを得ない」と考え、銃撃を決意した。

看護師襲撃事件

 第3の事件は看護師襲撃事件だ。野村被告は12年、北九州市内の美容整形クリニックで下腹部の増大手術と周辺の脱毛治療を受けた。

 被害者となった看護師が施術を担当したが、直後から頻繁に患部の異常を訴え、「腐っているのではないか」「看護師が意地悪でわざとやった」などとクリニックに抗議。「裁判する」と不満を漏らした。

 野村被告は配下の組長に襲撃を指示した。13年1月、実行犯の組員は福岡市の路上で、歩いて帰宅中の看護師に刃物で胸などを数回刺し、全治約3週間のけがを負った。

 第4の事件は、歯科医襲撃事件だ。第1の事件で触れた元漁協長を射殺後も、田上被告は利権介入を諦めず、親族などに働きかけを継続していた。

 07年には漁協が合併し、北九州市漁協が発足。組合長は元漁協長の弟が就任し、13年に何者かに射殺されたのは前に見た通りだ。

 最大規模の支所では、元組合長の長男が代表理事に選出された。田上被告は14年、親族を通じて長男に対し、利権介入を認めなければ、危害を加えると脅迫した。だが、長男からは応じないという意向が伝えられた。

 野村、田上被告は、長男の息子である歯科医の殺害を画策。田上被告が配下の組長に指示を出した。同年5月、北九州市小倉北区の駐車場で歯科医は胸や背中を複数回刺され、重傷を負った。福岡県警は15年、組織犯罪処罰法違反(組織的殺人未遂)の疑いで野村、田上両被告らを逮捕、計7人を起訴した。

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