工藤会「トップ」に異例の死刑求刑 福岡県警のメンツを潰した4つの市民襲撃事件

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頂上作戦も大詰?

「工藤会トップ、死刑求刑に表情変えず 検察『悪質性の元凶』」──YAHOO!ニュースが1月15日に掲載した、九州のブロック紙・西日本新聞の記事見出しだ。

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 福岡地裁で検察側は、北九州市の特定危険指定暴力団「工藤会」のトップ、総裁の野村悟被告(74)に極刑を求めた。

 更に同会のナンバー2、会長の田上不美夫被告(64)には無期懲役と罰金2000万円を求刑した。指定暴力団の最高幹部に死刑が求刑されたのは初めてとされ、多くのメディアが詳報を行った。

 これまで暴力団が引き起こす殺人や傷害事件は、対立組織の関係者など、いわゆる“ヤクザ者”が標的となることが多かった。

 一方、福岡地裁で公判が開かれている“市民襲撃4事件”の場合、市井の人々に暴力団が襲いかかったことが最大の特徴だ。

 4事件で野村被告は指揮と命令を下したとされ、殺人罪や組織犯罪処罰法違反(組織的な殺人未遂)などに問われている。

 ヤクザが堅気に襲いかかる恐怖。検察側は野村被告を痛烈に非難した。まず工藤会を《目的達成のためなら見境なく襲撃する組織》と糾弾。《4人の市民を標的とした点は、暴力団同士の抗争とは異なり、一般社会への脅威が極めて大きい》と指摘した。(末尾:註1)

元漁協長を射殺

 4事件を検察側の冒頭陳述などから、改めて振り返ってみよう。まず第1の事件は、1998年に発生した漁協元組合長の射殺事件だ。

 1960年代から北九州市・響灘で大型開発事業がスタート。元組合長は漁業補償交渉の窓口を務め、港湾工事の下請け業者選定にも大きな影響力があったという。97年には、大規模港湾工事で地元各漁協に計約74億円の漁業補償金交付も決定した。工藤会は元漁協長に接近して利権介入を画策したが、拒絶されてしまう。

 翌98年2月、野村被告の配下の組長など2人は、同市小倉北区のキャバレー前で元漁協長を射殺した。その後、田上被告は被害者の長男に電話をかけ、工藤会との交際を考えるよう要求した。

 福岡県警は2002年、田上被告など4人を逮捕。だが、田上被告は不起訴となり、1人は一審で無罪となった。一方、残る2人は08年、最高裁で無期懲役と懲役20年の有罪判決が確定した。

 13年には元漁協長の弟で、当時は北九州市漁業組合長を務めていた男性が射殺された。福岡県警が捜査するも、この事件は現在も未解決だ。

 県警は元漁協長の射殺事件を再捜査。野村被告と田上被告による指揮・命令が浮かび上がり、14年に殺人や銃刀法違反容疑などで逮捕に踏み切った。

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