指導者で巨人復帰の悲願達成、「桑田真澄」の人間力を磨いた30億円借金問題

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人間を磨く「砥石」

 引用を続ける。

《だから僕は「大丈夫です。3億円くらいなら頑張って年俸を上げて返済します」と言ったんです。3億円でホッとするのもどうかと思いますが、そのくらいならこの右腕で稼げる自信がありました。ところが、「いやいや、ゼロを数え間違えていないですか」と言われました。よかった、それなら3000万円なのかな、と思いましたが、違いました》

 借金の額は30億円だった。記事本文では、やはり義兄(註:既に離婚していたため、正確には元義兄)が桑田氏の母親から実印を借り、独断で行った不動産投資だと、記事では説明している。

 結局、物件を売却しても、桑田には20億円近い借金が残ったという。

《報酬のほとんどを借金の返済に充てなければならなくなりました。その後、運よくFA精度制度が導入されたこともあって、僕は総額で数十億円もの年俸をいただくことができました。そのほとんどは返済で消えていきました。僕にとってこの一件は高い授業料でしたが、よく考えれば、人間力を磨くための砥石だったように思えます》

 桑田に対するイメージも次第に変わっていった。メジャー挑戦は多くのファンが応援した。

「どうしても必要な人材」

 しかしながら、借金を巡っては主筆の渡辺との間で確執が生まれ、引退を巡っては監督の原としこりが残ったとも報じられた。それが“15年の空白”を生んだ原因だろう。

 だが、そうした確執も、歳月が消してしまったようだ。NumberWebは今年1月13日、「“借金処理”の確執も超えて…桑田真澄コーチ就任のウラにある原辰徳監督の“聖域なき改革”とは」の記事を配信した。

 報知新聞で長年にわたって巨人を取材してきた鷲田康の連載コラム「野球亭日乗」の1篇だった。異例の人事が行われた背景の1つに、日本シリーズでソフトバンクに惨敗したことを指摘している。

《リーグ連覇を果たしながら、日本シリーズでは2年連続でソフトバンクの前にスイープで敗れ去るという屈辱を味わった。その中で日々、進歩しチームを強くしていくために桑田さんはどうしても必要な人材として求めたということだ》

 サンケイスポーツ(電子版)は1月15日、記事「巨人・桑田コーチ、いきなりイズム全開!『うまくないと楽しめない』」を配信した。

《口にしたのが自身の練習哲学だ。「たくさん走って、たくさん投げる時代ではない」と、旧来の考え方に一石を投じた。続けて、若き選手たちに期待したのが野球を「楽しむ」こと。「早くうまくなってほしい。うまくないと楽しめない。2、3年で土台をつくって、それからでもいい」と強調した》

 どうやら当分の間、“桑田コーチ”の動向に大きな注目が集まりそうだ。

週刊新潮WEB取材班

2021年1月26日掲載

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