事件現場清掃人は見た 両親を亡くし、孤独死した30代女性のあってはならない話

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リフォームするケースも

 犯罪現場清掃会社のノウハウも参考にして、事件現場清掃を研究したという。

「臭いを消すためには、安定化二酸化塩素という除菌剤を使います。遺体の体液が床下まで浸透していると、床の表面を除菌しただけでは臭いが消えないことがある。その場合は床をリフォームするしかありません」

 最も悲惨だったケースを聞くと、

「6、7年前、知的障害のある30代の女性が自宅マンションで亡くなっているのが発見されました。彼女はご両親と一緒に暮らしていましたが、父親を病気で亡くし、その数年後に母親も自宅で病死したそうです。彼女は、母親が亡くなったことで不安を感じ、家を飛び出してしまいました。警察は、母の遺体を放置したとして彼女の行方を捜しました。数週間後に彼女は見つかり、逮捕されてしまったそうです」

 むろん、女性は意図して家を出たわけではない。

「結局、彼女は無罪放免になり、ひとり暮らしをするようになりました。それから、1年半後に遺体が自宅のトイレで発見されました。彼女が亡くなったのは、ひとり暮らしを始めて半年後だったそうで、1年間、遺体は発見されずに、白骨化していたんです。ケースワーカーも週に1度、彼女のマンションを訪問していたのですが、外出していると思ったようです。トイレが部屋の中心にあったため、死臭も外へ漏れず、近隣住民も気づかなかったそうです」

 遺体から出た体液が階下の部屋の天井に達したため、遺体が発見されたという。

即身仏

「部屋は、きれいなものでした。しかし、遺体が発見されたトイレは、床には黒々とした染みが全面に広がっていて……。トイレのスリッパは、ちょうど便座に腰をかけたときの位置のままで、固まっていました」

「寝室には、2組の布団が敷かれていて、そのうちのひとつに遺体の跡がありました。この布団で亡くなったのは彼女の母親で、そのままにされていたんです」

「トイレで発見された彼女は、誰も助ける人がいなくなって、徐々に衰弱して亡くなった。まるで瞑想状態のまま死んでミイラになる、即身仏のようでした」

 女性には、両親が残したそれなりの預金があった。しかし、それを使うことなく、ほぼ手つかずのままだったという。

「冷蔵庫をあけると、食べ物も残ったままでした。一人になってしまい、食事も作れず、どうしていいかわからなかったのでしょう。台所には食器がありましたが、使った形跡はありません。本来、施設に入れるとか、後見人を立てたりするべきだったと思います」

週刊新潮WEB取材班

2020年11月26日掲載

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