蚊帳の外から文在寅が菅首相に揉み手 バイデン登場で“不実外交”のツケを払うはめに

鈴置高史 半島を読む 国際 韓国・北朝鮮 2020年11月17日掲載

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他人の褌で大勝負

――韓国が四面楚歌ということに初めて気づきました。

鈴置:韓国人はしばしば「日本は孤立しているぞ」と根拠もなく言ってきます。すると「我々は蚊帳の外だ」と呼応する日本の専門家が出ますので、騙される日本人が多い。でも今、韓国こそが「蚊帳の外」なのです。

 困惑した文在寅政権は日本に4か国協議の場を作らせ、ここで外交の舞台に上がる作戦を立てたのです。誰からも相手にされなくなった韓国でも、多国間協議には加われますから。一言で言えば、他人の褌で相撲を取ろうとしているのです。

「バイデン大統領」だって、他の首脳の前で文在寅大統領に「俺が仲介した慰安婦合意はどうなった」とは問い詰めないでしょう。潜り込む隙間がどこかにないか、文在寅政権は「蚊帳の中」に必死で鼻を突っ込んでいるのです。

――アジアが激変する今、「蚊帳の外」とは大変な失態……。

鈴置:文在寅大統領の自業自得です。不誠実極まりない外交をやってきたからです。外交に手練手管はつきもの。でも、約束をいとも簡単に破る国は相手にされなくなります。

 朝日新聞は先に引用した社説で「韓国と首脳会談を開いて連携を強めよ」と訴えました。でも、「そうだ」と考えた読者がどれほどいたでしょうか。

 約束をいとも簡単に破る国のトップと、いくら首脳会談を開いても連携を深めようがありません。信用できない人と対話しても意味はない、と常識人なら考えます。

回顧録で見下したボルトン

 米国の怒りは文在寅大統領がワシントンに来ては「血盟の米韓同盟」と叫びながら、中国の言うなりになっていることです。

 在韓米軍のTHAAD(地上配備型ミサイル迎撃システム)基地は「市民」に封鎖され、米軍人は陸路での補給を断たれて不便な生活を強いられていました。しかし、韓国の警察は一切、取り締まりませんでした。

 米軍は怒り心頭に発しました。米退役軍人が、韓国軍にクーデターをそそのかしたとも思える論文を発表してもいます(「文在寅排除を狙い、米国がお墨付き? 韓国軍はクーデターに動くか」参照)。

 文在寅大統領の基本的な失策は、国益のためではなく、自分の人気取りのために外交をやっていると、周辺国から見抜かれたことです。

 トランプ政権の大統領補佐官(国家安全保障担当)を2018年4月から2019年9月まで務めたJ・ボルトン(John Bolton)氏が退任後に『The Room Where It Happened』を上梓しました。

 米朝首脳会談を回顧した部分で同氏は「韓国の目標は米国のそれ(非核化)とは常に異なった」「文在寅はいかにすれば米朝首脳と並んで自分も写真に写るかに汲々としていた」と酷評しています(81ページ)。

腹を膨らますカエル

 韓国人は自分の頭越しで米朝が話し合うことに不満を持ちますから、文在寅大統領は「自分が仕切っている」演出に全力を挙げた。

 しかし、人気取りで動く首脳は「ブレる人」と見なされ、周辺国から信用されません。実際、米国は北朝鮮との交渉に韓国を関与させませんでした。その後に韓国がどれだけ対北制裁の緩和を訴えても、米国は相手にしなかったのです。

 韓国に米国を動かす力がないと見てとった北朝鮮は、文在寅政権を完全に無視するようになりました。日本だって、人気取りの反日で肩を怒らせるだけの政権は子供扱いしました。

 強引な対北融和策や派手な日本たたきにより、韓国が世界を動かしていると内外に印象付けようとした文在寅大統領。でも、カエルがお腹を膨らませて自らを大きく見せるような外交はすぐに破綻し、韓国はますます「蚊帳の外」に追いやられてしまった。

 そして今、韓国は「東京五輪構想」を掲げて、再びお腹を膨らませ始めたのです。どこまでも懲りない政権です。

鈴置高史(すずおき・たかぶみ)
韓国観察者。1954年(昭和29年)愛知県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒。日本経済新聞社でソウル、香港特派員、経済解説部長などを歴任。95〜96年にハーバード大学国際問題研究所で研究員、2006年にイースト・ウエスト・センター(ハワイ)でジェファーソン・プログラム・フェローを務める。18年3月に退社。著書に『米韓同盟消滅』(新潮新書)、近未来小説『朝鮮半島201Z年』(日本経済新聞出版社)など。2002年度ボーン・上田記念国際記者賞受賞。

週刊新潮WEB取材班編集

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