蚊帳の外から文在寅が菅首相に揉み手 バイデン登場で“不実外交”のツケを払うはめに

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金正恩の訪日は可能か

――金正恩(キム・ジョンウン)委員長が日本に来られるのでしょうか?

鈴置:その可能性は極めて低い。北朝鮮は制裁やコロナ、風水害で食糧不足に陥っており、金正恩委員長は下手に国を空けられないはずです。妹の金与正(キム・ヨジョン)氏を名代に送る手はありますが、国を代表する首脳とは言えません。

 準備なしに4首脳が一堂に会しても、北朝鮮の核、日本人拉致、日韓対立という多様な問題を一気に処理するのは難しい。下準備しても問題が絡まって、むしろ解決が遠のきそうです。

――ではなぜ、「東京五輪構想」を言い出したのでしょうか。

鈴置:日本がこれに乗れば、菅首相も韓国主催の「日中韓」首脳会議に参加せざるをえなくなり、付随して開かれるであろう「日韓」にも応じざるを得なくなります。

 文在寅大統領は菅首相から東京での4か国協議に招かれた瞬間、「では、一足先に韓国にもお越しください」と言うことでしょう。要は孤立を打開する東京への招待状が欲しいのです。

四面楚歌の韓国

――「日中韓」のために「4か国首脳協議」なんて大風呂敷を広げたのですか?

鈴置:目的は「日中韓」だけではないと思われます。韓国人は「周辺大国を操る韓国外交」というショーを常に見たがっています。実現困難な大風呂敷を語るのが大好きな人たちですから、「ダメモト」で本気で東京五輪構想に取り組み始むかもしれません。

 もちろん、実現すれば実利も大きい。文在寅政権の相次ぐ外交的な失敗で韓国は四面楚歌に陥っています。「東京五輪構想」がうまくいけば、これを一気に挽回できるのです。

 日本に対しては度重なる背信行為で怒らせてしまい、首脳会談さえ開いてもらえない。北朝鮮からは「米国の犬」と見なされ、無視され続けています。

 米国とは外交・防衛関連の閣僚級の会談さえ開くのが不可能になっていた。「対中包囲網に加われ」と強要されるのを避けるためです。日米韓防衛相会談もドタキャンしました(「文在寅が日米韓防衛会談を拒否、中国に忖度し堂々と米韓同盟を壊し始めた…」参照)。

 11月9日に、ようやく康京和(カン・ギョンファ)外交部長官がM・ポンペオ(Mike Pompeo)国務長官と会談しました。が、それはD・トランプ(Donald Trump)大統領の落選の可能性が高まり、対中包囲網への参加要求は持ち出されないと予測できた後のことでした。

 韓国が日米と疎遠になったのを見透かした中国は露骨な属国扱いを始めました。中国は韓国という国を知り尽くしていますから「ここで脅せば昔の関係に戻せる」と、かさにかかっているのです。

 朝鮮日報は社説「中国がまた一方的に約束を破棄、政府はまた中国の代弁、韓国民を馬鹿にするな」(11月14日、韓国語版)で韓国が中国からまともな国として扱かわれなくなった実例を挙げ、「文在寅政権は中国の前ではネコの前のネズミだ」と嘆きました。

バイデンでますます不利に

――米国ではトランプ政権に代わり、J・バイデン(Joe Biden)政権が登場する見込みです。

鈴置:バイデン大統領になれば、韓国の困惑はさらに深まります。「同盟を強化するため、日韓の間を積極的に取り持つ」とバイデン氏の外交顧問は表明しています。

 聯合ニュースが「『バイデンの影』外交関係の核心、マッケオン、『韓国は最高の同盟』」(10月11日、韓国語版)で報じています。

 積極的に仲介するというなら「いわゆる徴用工」問題で韓国の肩を持ってもらえると期待する向きもあります。人権弾圧の象徴である「強制徴用」と強調すれば、リベラルなバイデン氏は日本に厳しく出る、との理屈です。

 が、韓国にとって都合の悪いことに、バイデン氏は副大統領として日韓慰安婦合意の保証人を務めた人だったのです(「かつて韓国の嘘を暴いたバイデン 『恐中病と不実』を思い出すか」参照)。

 バイデン氏は当然、「文在寅の合意破り」を知っている。日本がそれを突いて「『いわゆる徴用工』問題で合意しても韓国はどうせ破りますよ」と言いだすのは目に見えている。何せ、日韓慰安婦合意の際、日本側で仕切ったのは官房長官だった菅首相なのですから。

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