蚊帳の外から文在寅が菅首相に揉み手 バイデン登場で“不実外交”のツケを払うはめに

鈴置高史 半島を読む 国際 韓国・北朝鮮 2020年11月17日掲載

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未だに「属国の論理」

――「脅迫とはあまりに穿った見方。五輪に協力してやろうとの、我々の好意を侮辱するのか」と韓国人に怒られそうです。

鈴置:「好意」と見るのは余りにお人好しです。11月13日、「共に民主党」の金太年(キム・テニョン)院内代表が以下のように語りました。

 中央日報の「韓国与党院内代表『韓日首脳会談の早期開催は望ましい…菅首相の大胆な決定を』」(11月13日、日本語版)から発言を要約しつつ拾います。

・東京五輪が新型コロナで疲れた世界の人々の心を慰める行事になることを期待する。このためにはまず従軍慰安婦や強制徴用など歴史問題を解決しなければならない。菅内閣の大胆で前向きな決定を期待する。

 徴用工と慰安婦で謝罪・賠償しなければ東京五輪を邪魔するぞ――と、相変わらずドスを利かせているのです。

――「来たくなければ来るな」と日本に言い返されたら、韓国はどうするのでしょう。

鈴置:確かに、韓国選手団が来ないとなれば、拍手喝采する日本人もけっこういるでしょう。ところが、韓国人の多くが「我が国が参加をとりやめると脅せば、メンツを失うことを恐れ日本は譲歩する」と考えるのです。

 ここが日本人には分かりづらいところですが、彼らは大国と向き合う際に、一種独特の発想をします。

 長い間、中国大陸の王朝に仕えてきた朝鮮人。圧倒的な力の差の結果ですが、属国であることはやはり、うれしくない。そこで「中華王朝も、冊封体制に参加する我々の存在によりメンツを保っている」と考えることで自尊心を守ってきた。

 そんな彼らは「離脱」をちらつかせれば、日本も耳を傾けるはずだ――と、ごく自然に考えるのです。日本が宗主国だったのはたったの35年間だったのですが……。

北朝鮮を使って脅し

――「宗主国向け屁理屈」をいまだに持ち出すとは!

鈴置:日本を良く知る人はさすがに「属国の論理」に効き目がないことは分かっているのでしょう。韓国紙の東京特派員を務めた、李洛淵(イ・ナギョン)「共に民主党」代表はその代わりに「北朝鮮カード」を切りました。

 11月13日の発言を中央日報「韓国与党代表『東京五輪の成功には文大統領の支援が必要…文・菅共同宣言を』」(11月14日、日本語版)から引用します。

・東京五輪が成功するには北朝鮮が協力しなければならず、特に文在寅大統領の協力が必要だ。韓日間の争点、韓日首脳会談、さらに年内に予定されている韓日中首脳会談もそのような視点で見るのがよい。

 見出しの「共同宣言」とは両首脳が関係改善を宣言して突破口を開くとの案です。11月10日の表敬訪問の際、朴智元院長が菅首相に持ちかけました。

 宣言を出せば関係が良くなるものでもありませんし、宣言を出すためには首脳会談を実施することになるわけで、これも新型の罠といってよいでしょう。

――なぜ、北朝鮮の協力が必要なのでしょうか?

鈴置:北朝鮮が五輪に参加しなければ、テロを起こすかもしれないからです。

南北米日で「東京五輪構想」

――だとすると、李洛淵氏はすごい脅し方をしていることになりますね。

鈴置:ええ。「ウチの若い衆が何をするか分からないぞ。それが嫌なら、みかじめ料を払え」と言っているのと同じですから。

 そもそも、文在寅大統領が説得すれば、若い衆――北朝鮮が五輪に参加するとの保証はない。今年6月の南北共同連絡事務所の爆破事件で分かるように、北朝鮮は文在寅政権に徹底的な不信感を抱いています。韓国経由で北朝鮮にアプローチすれば、逆効果かもしれません。

 韓国は日中韓首脳会談を開くためにはどんな脅しもする。もう、なりふり構わなくなっています。「拉致問題の解決」まで持ち出した模様です。

 朝鮮日報だけが報じているのですが、朴智元院長は菅首相に、五輪の際、東京に韓国と北朝鮮、米国の首脳が集まり、日本を含め4か国で協議する「東京五輪構想」を打診したといいます。

朴智元、菅に『五輪で南北米日会談』を提案」(11月11日、韓国語版)によると、文在寅大統領の意向を伝えたもので、北朝鮮の核問題と並び、日本人拉致の問題も協議するという構想です。

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