蚊帳の外から文在寅が菅首相に揉み手 バイデン登場で“不実外交”のツケを払うはめに

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日本に仕掛けた罠

――韓国側は簡単に日韓首脳会談に応じると考えていたのでしょうか。

鈴置:今はそうは考えていないでしょう。文在寅政権の狙いは、首脳会談を開いて「いわゆる元・徴用工」の問題を話し合うことです。

 日本が譲歩しなくとも、これを議題にした瞬間に「問題の存在」を日本が認めたことになります。つまり「日韓併合は合法だった」との日本の従来の立場を放棄させることができるからです。

 日韓対立の最後の一撃となった韓国最高裁の判決骨子は、「不法な植民地支配下で不愉快な労働を強制されたことに対する慰謝料を払え」ということです。多くの人が誤解していますが「未払い賃金を払え」ということではありません。

「未払い賃金」なら、国交正常化の際に日本政府が韓国政府にまとめて支払っており、さすがに韓国の裁判所も二重請求は無理と判断したのでしょう。

 いったん日本政府に「併合は不法」と認めさせれば、後はやりたい放題にできます。当時、朝鮮人だった人は皆、その子孫も含め日本に「不法な植民地支配」に対する慰謝料を請求できることになります。

 さらに「我々は植民地支配を受けたことはない」「韓国は第二次世界大戦では戦勝国側だった」という、喉から手が出るほどに欲しかった「輝かしい歴史」も手に入れられます。

 だから菅首相は官房長官時代から一貫して首脳会談に応じないわけです。韓国側は、初めは「日本を罠にはめるのは簡単」と踏んでいたと思われますが、この硬い姿勢を見て「容易には騙せないな」と判断し、あの手この手に出てきたのです。

二階と朝日が頼み

――なぜ今、外交攻勢をかけてきたのでしょうか?

鈴置:菅政権は二階俊博幹事長のバックアップもあって誕生した。その二階氏は韓国では対韓融和派として有名です。

 中央日報は2019年9月30日、「観光客の急減に…二階幹事長『韓国に譲れるところは譲る』」(日本語版)で読売新聞に報じられた二階氏の以下の発言を引用しています。

・円満な外交を展開できるよう韓国にも努力は必要だが、まず日本が手をさしのべて、譲れるところは譲るということだ。
・我々はもっと大人になって、韓国の言い分もよく聞いて、対応していく度量がないとダメだ。

 韓国とすれば、こんな政治家が「陰の実力者」になった以上、使わない手はない。そこで二階幹事長と親しい朴智元院長を日本に送り込んだのです。

「絶大な影響力を誇る」と韓国では信じられている朝日新聞も最近の社説「徴用工問題 協議加速し危機回避を」(11月4日)で次のように主張してくれました。

・韓国では年内に、日中韓の首脳会談を開く準備が進められている。だが日本政府内では、徴用工問題の進展がない限り、出席は難しいとの意見がある。
・北朝鮮問題をはじめ、北東アジアの懸案は山積している。日中韓の今後を考える大局的な首脳対話を滞らせることがあってはならない。

東京五輪をボイコットするぞ

――でも、菅首相は首脳会談には応じなかった……。

鈴置:ええ、「大人」にもならず「度量」も見せず、「大局的」でもなかったわけです。ただ、韓国人も馬鹿ではありません。新たな仕掛けを用意しています。「東京五輪を人質にとる作戦」です。

 韓国の与党「共に民主党」は東京五輪のボイコット運動を展開してきました、朝鮮日報の「<萬物相> 『竹槍部隊』が突然『土着倭寇』になったワケ」(11月14日、韓国語版)を抄訳します。

・「放射能五輪」を全面に持ち出したのは我が国の与党だ。歴史問題・輸出規制問題での葛藤局面で反日扇動を率先した「共に民主党」は、東京五輪の競技場が放射能影響圏にあるという地図を公開し、「五輪ボイコットを協議する」と言った。
・議員らは「放射能五輪反対」というポスターを相次いでSNSに掲載した。「日本が歴史問題で謝罪しなければ、全世界の良心が五輪ボイコットをするだろう」「経済戦犯国に平和の祭典を主催する資格はない」と五輪反対の声を上げた。

 ところが一転し、日韓・韓日議員連盟は11月12日、日本の国会内で合同幹事会を開き「東京五輪・パラリンピックに関する協力委員会の設置」で合意しました。韓国側の本意は「ボイコット運動をやめてやるから首脳会談に応ぜよ」ということでしょう。

 文在寅大統領も11月14日、東アジア首脳会議(EAS)のテレビ会議で「2021年東京、2022年北京と続く北東アジアのリレー五輪を『防疫・安全の五輪』として開催するため、緊密に協力しよう」と呼びかけました。

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