26年前の「日野町事件」で問われる裁判官の罪 彼らはこうして冤罪事件に加担した

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即時抗告審も担当しかけた長井裁判官

 冤罪は警察、検察に批判が向けられるが、裁判官がもっと責任を問われるべきだ。鹿児島県警が選挙の買収事件をでっち上げた「志布志事件」では、中山信一県議が同窓会を抜け出して住民に金を配って同窓会に戻ることが時間的に不可能なことを、鹿児島地裁の谷敏行裁判長が自ら車を使って実証し、一審で全員に無罪を言い渡した。だがこうした裁判官は少ない。警察・検察を忖度し「初めに有罪ありき」の色眼鏡で臨み、矛盾点は作文でごまかす裁判官が少なくない。日野町事件は裁判官が検察に「裏工作」まで示唆している。

 10月11日、日野町の公民館で、阪原弘次さん、妹の美和子さん、弁護団と記者・ジャーナリストが集結した懇談会が開かれた。日曜日にもかかわらず多くが参加し関心の高さを見せた。冒頭、伊賀弁護士は「高裁の審理は長井裁判官のいる刑事2部から3部に移されたので大いに期待したい」と切り出した。なんと、棄却した第一次請求審を担当した長井秀典裁判官が高裁で即時抗告審の裁判長だった。「公正な裁判ができない」とする弁護団の抗議などが報道され、6月に高裁が「配付替え」したのだ。伊賀弁護士は「報道がなければそのままだったでしょう」と胸をなでおろす。伊賀氏は「自白について長井裁判官は『根本のところで信用できる』としながら、信用できる部分がどこなのか、一切書いていない。これなら何とでも書ける。でたらめな裁判がまかり通ってきたのです」と熱を込めた。

 警察、検察、とりわけ裁判所のでたらめを余すことなく示す「日野町事件」に注目したい。

粟野仁雄(あわの・まさお)
ジャーナリスト。1956年、兵庫県生まれ。大阪大学文学部を卒業。2001年まで共同通信記者。著書に「サハリンに残されて」「警察の犯罪」「検察に、殺される」「ルポ 原発難民」など。

週刊新潮WEB取材班編集

2020年10月26日掲載

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