26年前の「日野町事件」で問われる裁判官の罪 彼らはこうして冤罪事件に加担した

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裁判官が検事を手助け

 実は一審でおかしな動きがあった。結審の直前、検察側が突然「予備的訴因の追加」つまり起訴状の変更を求め裁判所に許可された。起訴状で「午後8時40分ごろ」とした犯行時間を「午後8時ごろから翌日午前8時ごろ」と大幅に拡大。「店内」としていた犯行現場を「日野町と周辺地域」とぼかしたのだ。店内の証拠品や住民証言などで起訴状通りの立件ができなくなったためだ。本来なら完全な検察の敗北で無罪のはず。ところが一審の中川裁判長は「被告人が店舗内で被害者のスキをついて殺害したにせよ、甘言を用いて外部に連れ出して殺害したにせよ…」とした。こんないい加減な事実認定があろうか。

 96年3月、毎日新聞が「訴因の追加は坪井祐子裁判官が密かに西浦久子検事に示唆した」との内容の特ダネを報じた。有罪立証に窮した検事に、推定有罪にしたかった裁判官が知恵を授けていた。坪井裁判官のとんだ「裏工作」で阪原さんは刑務所に入れられたのだ。当時、毎日新聞の取材に西浦検事は事実を正直に認めたが坪井裁判官は答えなかった。

偽装された「秘密の暴露」

 警察捜査に「引き当たり捜査」というのがある。逮捕後に容疑者が「事前知識なしに」捜査員を遺棄現場などに誘導できたとして「真犯人しか知りえない秘密の暴露」として有罪の論拠にする。検察は、阪原さんが金庫を捨てた石原山の雑木林へ捜査員を「自ら案内した」とする警察の写真を証拠提出していた。だが第二次請求審で弁護側がネガの開示を求め、裁判所命令で開示されたネガを調べると「現場へ向かう」としていた写真の多くは帰りの写真と判明した。伊賀興一弁護団長は「行きさえ教えてもらえれば帰りは自分でも戻れるから捜査官より前を歩けますよ」と笑う。「秘密の暴露」は直接の物証が弱い時に捜査側が頼るが、如何様にもなる。「インチキ写真」は再審開始決定の大きな論拠だった。

 日野町事件では当初、阪原さんのアリバイを証明していた住民の証言が不自然に変遷した。滋賀県警は住民に阪原さんを見かけなかったことにさせる「アリバイ潰し工作」をしていた。発生当時、県警は「グリコ・森永事件」関連の「ハウス食品脅迫事件」で犯人を取り逃がし世間の厳しい批判を浴び、県警本部長は自殺していた。日野町事件で3年間、犯人を捕まえられず焦った滋賀県警の捏造を裁判所が「積極的に」手助けしたのである。

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