「金正恩が与正に権力の一部を委譲」報道の真相、実情は独裁体制崩壊で兄も妹も共倒れ

国際 韓国・北朝鮮

  • ブックマーク

Advertisement

消えた金与正

 一方の金与正だが、デイリー新潮は7月1日、「北朝鮮『韓国への軍事行動保留』報道の読み方、“金与正軟禁”もある軍クーデター説」との記事を掲載した。

 与正は6月に開城の南北共同連絡事務所を爆破、後継者争いの有力候補として、今も取り沙汰されている。

 だが、爆破後に与正が軍部への“命令”に挑戦したのだが、軍幹部が“造反”したという事実が判明した。これは一種のクーデターであり、与正が“放逐”されたのではないか、と報じた記事だった。

「金与正氏に権力が委譲されると国情院は報告したとされていますが、にわかには信じられません。彼女の肩書きは依然として『党第1副部長』です。これは、さほどの高位ではありません。北朝鮮では序列が全てです。もし本気で金正恩氏が妹に一部の権力を委譲するならば、異例の出世をさせ、相応しい肩書を与える必要があります。しかし今のところ、そうした動きはありません」(同・重村教授)

 労働新聞の紙面からも、金与正が軽視されていることが読み取れるという。労働新聞は幹部クラスの言動なら必ず1面で報じるが、ここに与正は登場しない。彼女の動向が報じられる場合は、必ず2面以降。おまけに最近は、紙面に写真が掲載されることもなくなったという。

大統領と国情院

「国情院の立場を慮れば、現政権が左派ということもあって、正確な情報を公開するのは難しい。特に与正氏は肩書の変更がない上、最近になって北のメディアに写真掲載を止めさせた可能性があります。『与正氏に権限委譲』は誤報と言っていいレベルですが、政権と水面下で様々な綱引きが行われ、役人らしく妥協したのでしょう」(同・重村教授)

 金正恩がナンバー1、金与正がナンバー2と見なしている関係者や韓国国民は、決して少なくない。

 文政権からすると、国情院が「正恩も与正も駄目です」と公式に認めてしまうと、対北政策を根本から改める必要が生じてしまう。左派政権としては大きなダメージを受ける可能性があるだろう。

「国情院は『金正恩氏の独裁体制が崩れ、集団指導体制に移るのだとしたら、それは正恩氏の健康状態が原因と見て間違いない』という分析結果を示すことはできました。北に対して『我々は真実を知っているぞ』と圧力をかけたわけです。その代わりに、与正の誤報については眼をつぶることで妥協したのではないでしょうか。」(同)

次ページ:独裁者を引退!?

前へ 1 2 3 4 次へ

[2/4ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。