向精神薬とアルコールで現実逃避する人たち…コロナ失業で不安、鬱の症状が

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仕事がなく一人で部屋にいると不安に押しつぶされる

 新型コロナの影響による失業や収入の減少により、不安から逃れるために向精神薬やアルコールを乱用して心身を壊す人たちがいる。彼らはごく一部の例外なのか、それとも今後増える可能性のある新たな社会問題になるのか。当事者や専門家に話を聞いた。

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 不景気が深刻化すると違法薬物の検挙者が減少する。リーマンショックが起きた2008年の検挙者数は1万5千人近かったのに、5年後の2013年には1万3千人強まで減少した(厚生労働省の薬物事犯検挙状況)。同省の一般職業紹介状況によると、有効求人倍率は2008年で0.88倍、2013年も0.93倍で1倍を超えるのは同年11月までかかり、14年からは増加している。

 元売人の男性はリーマンショック当時は売り上げが激減したと話し、その理由を「皆が仕事を失うから、薬物なんて誰も買う余裕がなかったんだろう」と振り返る。

 現在、新型コロナで飲食や観光などの業種が大打撃を受けていることは広く報じられている通りで、この男性に今日の薬物事情を調べてもらったところ「違法な薬物の代わりに向精神薬と飲みやすいアルコール度数の高い酒とを合わせてトリップしているようだ」と教えてくれた。

 彼らは薬物を買う金がないからそのようなことをしているのだろうか。現在、向精神薬依存と診断され治療に取り組んでいるAさんは「これまで違法薬物に手を出したことはないし、出そうと思ったこともない」と話す。違法薬物の類にまったく興味はなかったそうだ。

 Aさんは現在20代後半。春まで東北地方のスナックでアルバイトをしていたが、コロナの感染拡大とともに出勤数は減少。果ては緊急事態宣言の発令で勤め先が休業し、自宅アパートで朝から晩まで引きこもる生活だったという。

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