向精神薬とアルコールで現実逃避する人たち…コロナ失業で不安、鬱の症状が

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部屋は空き缶と薬の包装材が、家具や壁に傷も…

「これまでは将来について深く考えていませんでしたが、休みの間ずっと家にいるとネットやゲームをするのにも飽きて将来について考えるようになったんです」とAさん。図らずもコロナで時間が空いたことで、このままでいいのだろうかと考え始めた。そして、自分には資格もキャリアもないことに改めて気付き自分の将来を悲観した。

 20歳の頃から不眠や不安感という症状を和らげるため、心療内科に通い睡眠薬や抗不安薬などの向精神薬を服用していた。不安感が増し、医師に処方を変えてもらったが眠れない。医師からは薬の量を増やすのは望ましくないと言われ、別の診療所などを巡り薬の量を増やしたという。

 それでも不安感が治まらず、気を紛らすため酒も飲むようになった。スナックで働いているが、それほど酒に強くはない。また、休業中で金銭に余裕があるわけでないAさんは安いという理由でストロング系チューハイを買った。

 向精神薬と一緒に飲むと一瞬で意識がなくなり気付くと翌日の昼だった。それから向精神薬とストロング系チューハイを煽り、薬が切れたら心療内科を巡回する日々が続いた。

 しかし、そんな生活は長く続くはずがなかった。診察代や薬代、飲酒代で貯金が底をついた。薬も酒もない暮らしに戻ると、これまで向精神薬と酒で誤魔化していた不安感が一気に襲ってきたという。その上、これまで感じたことのなかった倦怠感や頭痛などの身体的な苦痛にも苛まれるようになった。

 たまらず当初から通っていた心療内科の門を叩き、医師から診断されたのは向精神薬依存症。不眠や頭痛などの離脱症状に耐え、現在は身体的な苦痛は治まったという。

 そうして自身の部屋を冷静になって見回すと、空き缶と薬の包装材が散らばり、記憶にないまま暴れたのか、ところどころ家具や壁に傷も付いていた。

「幸い車を運転するようなことはなかったようですが、薬と酒に依存していたままだったら何かとんでもないことをしてしまったかも知れません」(Aさん)

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