向精神薬とアルコールで現実逃避する人たち…コロナ失業で不安、鬱の症状が

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「何か刺激が欲しかったのだと思います」

 他方、40代前半のBさんはこれまで向精神薬を服用した経験はなかった。ことし2月に勤めていた北陸地方の飲食店が廃業したことで無職に。失業保険は支給されているし、貯金も一応はあるが自身の年齢と今後の就職について考えると不安を覚え寝つきが悪くなり、心療内科で抗不安薬などを処方してもらった。

 ある日の夜、晩酌をしながら見るともなくSNSを見ていたところ、ストロング系チューハイでオーバードーズをしたら気持ち良くなったという書き込みを目にした。ちょうどBさんが飲んでいたのはストロング系チューハイ。その日はもう寝るだけで用事はない。処方された睡眠薬を口に含み、一気に飲み干した。

 しばらくすると、酔いとは違う酩酊感が込み上げ、何もしなくても楽しい気分になってきた。不安も何も霧散し、幸福な気分に浸っているうちに意識が飛んだという。

 そこからの転落は、先に書いたAさんとほぼ同じなので割愛する。

 Bさんは当時の心境を「この年になって恥ずかしい話なんですが、失業してから鬱々とした日々を送っていたので何か刺激が欲しかったのだと思います」と話す。

 上記の2人を心が弱いと非難するのは容易だが、非難すれば解決する問題でもない。

 国立精神・神経医療研究センターの全国の精神科医療施設における薬物関連精神疾患の実態調査(2018年)によると、「現在の精神的症状に関係のある薬物」として睡眠薬・抗不安薬が覚せい剤に次いで17.1%となっている。また、厚生労働省の精神疾患のデータでは精神疾患の患者数は2017年で419万人を超え、2人のような状態に陥る人への対策は急務と言えるだろう。

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