コロナ感染者、東京都よりはるかに情報公開している足立区 247人のデータから見えるもの

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死なない若者、死ぬ高齢者

 足立区は7月10日、公式Facebookに「区内の新型コロナウイルス感染症患者が増加しています」との記事を掲載し、注意喚起を行った。

《東京都全体の傾向と同様に、7割弱が10代から30代の若い世代です》

《区内新規感染者の感染ルートの主な傾向は、以下の通りです。
・都心区の「夜の街」関連の従業員や来店客
・友人等との集団での飲食など》
(註:全角数字を半角数字にするなど、デイリー新潮の表記法に合わせた。以下同)

 都が、いや、小池百合子都知事(67)が何度も夜の街クラスターを訴えるのも、それなりの理由があったことが分かる。

 もし夜の街で感染者を封じ込めることに成功したら、少なく見積もっても、数十パーセントは感染率が下がるだろう。

 次に見たいのは、感染者のうちどれくらいが回復し、どれくらいが死亡したかという問題だ。

 まず247人のリストのうち、59人は「回復」や「死亡」が記述されず、空欄になっている。つまり治療中なのだ。

 結果が記録された188人のうち、170人が回復している。247人を分母にすると68・83%となり、188人を分母とすると90・43%となる。

 一方、亡くなられた方は18人。同じように計算すると、7・29%か9・57%という結果になる。

 足立区のデータを、まず都のデータと比較してみよう。7月13日現在、都の陽性者数は7721人。そのうち「退院等(療養期間経過を含む)」は6169人のため、全体の79・89%にあたる。

 一方、都の死亡者は325人のため、4・2%となった。退院率の優劣は判断が難しいが、足立区の死亡率は都の平均を上回っている。

 世界のデータとも比較しておこう。NHKのニュースサイトNHK NEWS WEBが7月12日に報じた「世界の感染者 1272万28人 死者56万5178人 新型コロナウイルス」の数字を使ってみる。

 まず見出しから総感染者における死亡者の占める割合を計算してみると、4・44%となる。更に記事で紹介されているアメリカとブラジルも算出してみよう。

 アメリカは感染者が324万7684人で、死亡者は13万4777人。割合は4・14%となる。ブラジルは183万9850人に7万1469人で、割合は3・88%となる。

 諸外国はPCR検査を拡充させているのに対し、日本は絞って検査を行っていた。そのことから日本の死亡率は高くなる傾向は以前から指摘されていた。専門家の予測が具体的な数字で裏付けられた格好になる。

亡くなられた人々の詳細データ

 更に足立区で亡くなられた18人の内訳をご紹介しよう。まず性別は男性が9人、女性が9人で同数だ。

 年齢は最多が70代の7人、次に60代の6人、80代の5人となり、それ以外の年齢層で亡くなった感染者はゼロだ。

 若者は多くが感染するが死なない。一方、高齢者は罹患すると死亡リスクが高い――従来から指摘されていることではあるが、数字で見せつけられると重みが増す。

 足立区が「感染者」の情報を1人ひとり丁寧に紹介しているのに対し、都は全体の数字を発表しているに過ぎない。

 率直に言って、足立区が開示したデータだけでも、これだけのことが分かるのだ。東京都も同じ水準のリストを公開したほうがよさそうである。

週刊新潮WEB取材班

2020年7月16日掲載

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