「中国発コロナ禍」を16年前から警告! 米大統領に届けられた「予言の書」

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ブラック・スワンのリストに

 今度の新型コロナウイルスでも、中国が正確な情報を開示せず、感染を加速させたとの指摘があるが、それは別に今に始まった話でもないのだ。

 結局、有効な治療法が見つからないまま流行は下火になり、2003年7月にWHOは終息宣言を出すのだが、NICがワシントンで「グローバル・トレンド2020」の発足会議を開いたのは、そのわずか4カ月後だ。ハッチングスは、SARSと新型コロナウイルスが中国の強みと弱みの両方を曝け出したと言う。

「一般的に、中央集権の国家というのは急速な経済成長を遂げるのには向いてるんです。あのスターリンが指導者だった頃、ソ連は西側を上回る飛躍的な成長を遂げたでしょう。だが、いざ何かの危機が起きると、自由に情報が伝わらず柔軟な対応が取れない。そして、それが事態を悪化させてしまう。(1986年の)チェルノブイリの原発事故など、その典型でしょう。今回のコロナウイルスでも全く同じことが言えますよ」

 こうして報告書はブッシュ政権に渡され、その後、ハッチングスもNIC議長のポストを去った。だが、彼の後任は感染症を重大な脅威と見たらしく、ホワイトハウスに繰り返し警告が発せられていった。

 例えばバラク・オバマが大統領選に勝利した2008年11月、NICは、2025年の世界を予測する報告を作成した。そこでは丸々1ページが感染症に割かれ、それも中国を発生地とする、新型のコロナウイルスのインフルエンザを警告したのだ。

「パンデミックは、現在の病原体の遺伝子が突然変異、再集合したり、人間へ感染する新たな病原体が発生したりするかにかかっている。専門家は、H5N1型の鳥インフルエンザが変化しうるとするが、SARSコロナウイルス(中略)も可能性がある」

「そうしたパンデミックが起きるとすれば、発生地は、おそらく中国や東南アジアなど人口密度が高く、家畜と人間の生活圏が近い地域であろう。野放しの畜産はH5N1型など人獣共通の感染症を広げ、それが突然変異して大流行するかもしれない」

「発生国で国民の健康状態を適切にモニターしなければ、早期の病気識別は困難である。公衆衛生の対応が遅いと、感染性の高い病原体の認識も遅れる。信頼できる検査結果が出るまで数週間が経ってしまい、その間、東南アジアの市町村にクラスター(感染者集団)が現れる。海外渡航が制限されても、症状の軽い、または無症状の旅行者が他の大陸に感染させていくだろう」

 ここまで読んで、思わず背筋が寒くなったという人もいるかもしれない。中国で発生した謎のウイルス、それを無症状の感染者がクラスターとなって世界中へ広げる……まさしく、今、目の前で起きている現実そのものではないか。

 そしてオバマ大統領の再選後、2012年12月にも2030年の予測が作られ、ここで感染症の世界的大流行は「ブラック・スワン」のリストに入れられた。黒鳥を指すブラック・スワンとは予測が非常に困難だが、実際に起きた時の影響が甚大な出来事を意味し、パンデミックは核戦争や急激な気候変動より上位に置かれている。むろん、後任のトランプ政権にも同様の報告が届き、そこでも感染症ははっきりと警告された。

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