withコロナで武器商人まで参戦「マスク中国商人」に密着ドキュメンタリーを観た

国際 中国 2020年6月2日掲載

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 日本のマスク不足は解消されたかに見えるが、新型コロナウイルス発生後の世界的なマスクの枯渇は記憶に新しい。さらに、withコロナはwithマスクの世界でもある。こうしたなか、中国のネット上で話題となっているドキュメンタリー映画がある。タイトルはその名も「マスク・ハンター(口罩猟人)」。

覚せい剤よりも大きな利益を生む商品に

 監督は呉東(ウー・トン、ただし、今回の映画はハンドルネーム“花総(ホア・ツォン)”を使って発表されている)。

 2018年、高級ホテルの清掃スタッフがコップや洗面台、さらにトイレの便器まで同一のタオルで磨いている様子を隠し撮りで撮影した人物で、それは日本でも随分ニュースになったから記憶されている方も少なくないだろう。

 撮影の舞台は、トルコ・イスタンブール。中国からマスクの原料を買い付けに来た30歳の青年・林棟(リン・トン)と助手の女性WAKEに密着し、マスク流通の源流を探る。撮影を始めたきっかけについて、監督はメディアでのインタビューでこう答えている。

「2月26日にベトナムからトルコに移動し、別のテーマでドキュメンタリーを撮る予定だったんです。シャングリ・ラ ホテルの中華料理店で微博(ウェイボー、中国版ツイッター)からつぶやいたら、私のファンだという女性から『近くにいるので会いたい』とメッセージをもらいました。それが林棟の助手・WAKEだったんです」

 WAKEから中国からマスク原料を買い付けに来ていると知ると、監督は林棟に取材を交渉。密着を許可され、3月5日~18日まで、2週間近くに渡り撮影した。細身で端正な顔立ちの林棟は、もともと医療物資に関する仕事を8年続けており、中国でコロナが感染爆発した直後、1500万枚のマスクを海外から買い付けた。その手腕を買われて医療機関などから依頼を受け、はるばるイスタンブールまでやってきたのだという。

 作中、林棟はトルコ人商人を相手に、長時間の交渉を繰り返す。銃を所持したボディーガードを常に引き連れ、倉庫で「メルトブロー不織布」と呼ばれるマスク原料の巨大ロールを視察する。冒頭で明かされるのは、マスクはすでに特殊な“戦略的物資”となっていた点。有象無象の中間業者に買い占められていて、軍事物資の仲介を行う武器商人が入っているケースもあった。林棟は言う。

「マスクは今や、武器や覚醒剤よりも大きな利益を生む商品になったんです」

“転売ヤー”がグローバル単位で大量に出現し、時には騙し合いのようなこともある。容易には他人を信用できない中国社会で揉まれていたはずの林棟ですら、粗悪品をつかまされた挙句、返金を求めて四苦八苦する様子も描かれる。

「騙されることを多少は受け入れないと、やってられない」

 というセリフもあった。トルコ商人からは「税関用に証明書は偽造している」とあけすけに知らされるなど、清濁合わせ飲むような場面も多い。品行方正な日本のサラリーマンには、とてもではないが太刀打ちできそうにない。

 林棟によると、原料の価格はコロナ発生前と発生後で、20倍まで跳ね上がった。日本では1箱500円で買えたはずのマスクが、ピーク時は5000円まで値上がりしたのも当然といえば当然だ。消費者の手に渡るまでには、数々の“転売ヤー”もとい“中間業者”たちも存在する。

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