韓国は「防疫の模範」が裏目でクラスター、それでも「世界を先導」という自己暗示

鈴置高史 半島を読む 国際 韓国・北朝鮮 2020年5月19日掲載

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インチキしたい韓国

――それにしても「日本はインチキしている」と決めつけるとは。

鈴置:韓国人が「日本はインチキしている」と言う時は、自分がインチキしているか、そうしたい時です。この頃、「感染者数を増やさないよう、検査を減らせ」との声が韓国で上がっていました。

 2月末までに、韓国の感染者数は中国に次ぐ世界2位に躍り出ていました。それに伴い、韓国からの入国を制限する国も急増。そこで検査を減らして見せかけの感染者数を減らすべきだ、との世論が――たぶん、政権内部からも――高まっていたのです。

 聯合ニュースが「毎日1万件に達する患者の早期発見努力が大量の感染者確定をもたらす」(3月4日、韓国語版)で、こうした声と中央防疫対策本部の鄭銀敬(チョン・ウンギョン)本部長の「我が国が大量の検査をするのは正しい」との反論を報じています。

 韓国人こそがインチキをしたかった。そこで「日本がインチキしている」と叫んだ。しかし、防疫当局は圧力に屈せず、必要な検査は実施し続けた――構図です。

 なお、問題になった「大量の検査」。「大量」と言っても感染者の家族や同僚など、濃厚接触者を検査していただけ。日本と同じ手法です。大邱で感染爆発が起きたため、結果的に「大量」になったに過ぎないのです。

『防疫で世界を先導』と胸を張る文在寅、『反面教師に』と冷ややかな安倍晋三」(5月11日)で指摘した通りです。

発展途上国に逆戻り

――入国を制限されることより、感染の拡大を防ぐほうが重要ではないのですか?

鈴置:それも「先進国化」に関係します。韓国人はビザ無しで入国できる国の数が多いことが先進国の証(あかし)と考えています。歴代政権は各国政府に対し、執拗に「韓国人をビザ無しで入国させよ」と迫っています。

 新聞にも年中、「どこそこの国が韓国人に対するビザ無し入国に応じた。後、何か国がビザ無しになれば、日本に追いつける」といった記事が載ります。

 新型肺炎が理由であっても、韓国からの入国を制限する国が増えれば「発展途上国に逆戻り」と韓国人は落胆するのです。

 聯合ニュースが3月20日「日本からの入国制限・行動制限 韓国を超え209カ国・地域に」(日本語版)を配信しました。

 見出し通り「韓国は日本に勝った」という記事です。こんな時まで「韓国は日本より上である」というネタを韓国メディアは探し回るのです。

 最近、韓国政府が日本に対し「輸出規制をやめよ」と迫っています。これも、いわゆる「ホワイト国」から外され「途上国待遇」に落とされた、という不快感の反映なのです。

検査数が多いから先進国

――結局、防疫当局は世論に迎合せず、検査を減らさなかった。感染者数の急増に直面した文在寅政権はどうしたのですか?

鈴置:「韓国は検査数が多いから進んだ国なのだ」という逆張りのロジックを開発、世界に向け発信しました。

 康京和(カン・ギョンファ)外交部長官は3月15日のBBC出演を皮切りに、世界のメディアや各国外相に「大量検査で感染拡大を抑えた」と自慢し始めました。

 3月15日現在の韓国の新型肺炎による死者は75人。人口100万人当たりでは1・45人で当時、アジアでは中国に次ぐ多さでした。しかし、韓国政府は死者数には一切、触れませんでした。それを知られれば相手にしてもらえないからです。

 韓国人の臆面のなさは驚くべきものがあります。事実には基づかず、とにかく「言ったものが勝ち」。でも、これが功を奏し、欧米のメディアは宣伝を鵜呑みにしました。その結果、「韓国すごいぞ!」が世界の常識となったのです。

欧米メディアも合唱

――なぜ、欧米は「韓国はすごいぞ」を鵜呑みにしたのでしょうか。

鈴置:ちょうどその頃、欧米で感染拡大が大問題になったからです。「検査が不足している」と自国の政権を攻撃したいメディアにとって、韓国は「模範」として引き合いに出すのに格好だったのです。

 CNNの「Health and Human Services Chief says ‘we don’t know‘ how many Americans have been tested for coronavirus」(3月10日)の議論が典型です。開始40秒後からご覧下さい。

 米国のエイザー(Alex Azar)保健福祉省長官にCNNのレポーターが「なぜ、韓国は大量検査ができて、米国にはできないのか」と激しく迫りました。

 エイザー長官は「能力の問題ではない。何をすべきかの問題だ。韓国は爆発的な感染が起き、クラスター(感染者の集団)が見つかった。だが、米国は状況が異なる」と答えました。が、米国民の納得は得られなかったようです。

 医療の発達した先進国の国民は「検査至上主義」に陥りがち。さらには米国でも韓国同様に感染爆発が起きて、大量の検査が必要になったからです。

 世界から「お墨付き」を得た韓国人は有頂天になりました。もちろん、日本への侮蔑も忘れませんでした。中央日報のユン・ソルヨン東京特派員は「バカか、問題は検査だ」(4月24日、日本語版)で「大量の検査ができない日本」を罵倒しました。

「ニュースタンス編集長」を名乗るようになった徐台教氏も4月7日、安倍首相がPCR検査を1日2万件に増やすよう指示したのに対し、日本語で「やっと動いたのか」とツイートしました。

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