韓国は「防疫の模範」が裏目でクラスター、それでも「世界を先導」という自己暗示

鈴置高史 半島を読む 国際 韓国・北朝鮮 2020年5月19日掲載

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中国も見下す対象に

 韓国人が見下す対象は中国にも広がりました。例えば、ハンギョレの「韓国に防御壁築いた国々が『韓国の新型コロナ対応モデルから学ぼう』」(3月21日、日本語版)です。

 見出しから「我々を見下していた国を見返してやった」という気分が韓国にあふれているのがよく分かります。そしてこの記事は「中国よりも韓国が上」と主張したのです。

・「韓国型モデル」に関心が高まっている背景には、「中国型モデル」と対比しようという意図もある。
・米国と欧州のマスコミは中国の権威主義モデルと異なり、個人の権利と自律性を侵害せずに防疫の効率性を発揮する韓国モデルに注目している。
・米国や欧州、日本が独自のモデルを示せない中、韓国は民主主義体制を維持しながらも社会的災害に効果的に対応できることを示す巨大な実験場になっているわけだ。

「民主的だから韓国が中国よりも上」との論理です。政権もさっそく取り入れました。4月19日の演説で文在寅大統領は以下のように語ったのです。

・我々は開放性、透明性、民主性を基盤とした強力な「連帯と協力」により、必ずや「コロナ19」を克服し、世界の希望となるでしょう。

 個人情報をさらされた感染者は「どこが開放性、透明性、民主性だ」と恨み節を言いたくなるでしょうが。でも、これに「ITを駆使」も加わって、韓国人の自信は頂点に達したのです。

劣等感を癒すのがコツ

――結局、韓国での統治のコツは国民に自信を与えることなのですね。

鈴置:そこです、そこなのです。韓国人は我々には想像できないほどの劣等感を抱いて生きています。だから「韓国人は偉大である」との証拠を見せてくれる政権には付いて行くのです。

 日本人には「日本よりも韓国が上」との言説が目に付きやすい。でも、正確に言えば韓国人が追い求めているのは「西洋から尊敬される」とか「中国よりも上」といった――一口で言えば、我が国は先進国なのだ、劣った存在ではない、との確証なのです。

 1988年のソウル五輪で「我が国は日本以外のアジアでは一番」と韓国人は自信をつけました。アジアでの五輪開催は日本に次ぎ2番目だったからです。でも、1997年の通貨危機で自信は崩壊しました。

 21世紀に入ってからは「通貨危機からもっとも早く回復した国」「2008年の世界同時不況をもっとも上手に乗り切った国」「G20をアジアで初めて主催した国」との称号を自ら開発し、自信を取り戻しかけました。

 ところが2014年のセウォル号事件や2015年のMERS(中東呼吸器症候群)で、韓国には「これでも国か」との声があふれました。「先進国では起きない事件」が起きたからです。

 朴槿恵(パク・クネ)大統領の弾劾も、その一環でした。1人当たりGDPでは日本と肩を並べるようになったのに、大統領に近い人が堂々と利権をあさる。これでは先進国と言えません。弾劾運動の現場でも「これでも国か」が叫ばれました。

 弾劾後の選挙で成立した文在寅政権は、暴力を使わずに大統領を引きずり下ろしたのは「世界に例のない革命」と国民をおだてました。そして今、防疫でも先進国となったと自信を与えたのです。

 こうした心の動きは、拙著『米韓同盟消滅』の第3章「中二病にかかった韓国人」をご覧ください。

どちらに転んでも厄介の素

――今度こそ、韓国人は自信を付けるのでしょうか?

鈴置:あまり、期待はできません。彼らの劣等感は恐ろしく根深い。できたての自信はちょっとしたことで吹っ飛びます。それに今後、少子高齢化で韓国経済の規模が縮小するのはほぼ確実です。

するとまた自信を失い、精神が不安定になるでしょう。恨みのこもったまなざしでこっちを見ながら「先進国になれないのは日本が邪魔をしているからだ」などと言い出しかねないのです。

 仮にも、経済成長を続けることに成功すれば、日本を上から目線で罵倒したり、無理難題を吹っ掛けてくるでしょう。

 どちらに転んでも韓国は厄介の素です。日本にとっては困ったことですが、これが現実です。

鈴置高史(すずおき・たかぶみ)
韓国観察者。1954年(昭和29年)愛知県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒。日本経済新聞社でソウル、香港特派員、経済解説部長などを歴任。95〜96年にハーバード大学国際問題研究所で研究員、2006年にイースト・ウエスト・センター(ハワイ)でジェファーソン・プログラム・フェローを務める。18年3月に退社。著書に『米韓同盟消滅』(新潮新書)、近未来小説『朝鮮半島201Z年』(日本経済新聞出版社)など。2002年度ボーン・上田記念国際記者賞受賞。

週刊新潮WEB取材班編集

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