2億円の新薬も保険適用…国を破綻させる「ムダな医療」 抗生物質の6割は不必要!?

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「必要ですか」

 こうした「不適切医療」の一つの指標となるのか。「Choosing Wisely(チュージング ワイズリー)(賢い選択)」という運動がある。発祥はアメリカだ。アメリカの外科や内科の学会がそれぞれ、自らの専門領域における「無駄な医療」をピックアップ。リストを公開し、警鐘を鳴らしている。

「アメリカでは、年間の医療費は300兆円を超えています」

 とは、この運動に詳しい、医療経済ジャーナリストの室井一辰氏である。

「オバマ政権の時には、『オバマケア』と呼ばれる、保険加入を拡充する制度も出てきた。このまま無駄な医療を続け、医療費が高騰していけばいずれ医師の裁量権を狭めたり、給与を抑制したりする動きが生まれかねない。そんな事情から、医学界からの自浄作用として出てきた運動なのです。2012年から始まり、既に約80学会が参加。リストは600程度にも上っています」

 病院によっては、リストを電子カルテと連動させ、医師がこれにひっかかるような処置を取ろうとすると、「必要ですか」とアラートが鳴るシステムを作り上げているところもあるという。

「この運動はカナダやオーストラリア、ニュージーランド、ドイツ、スペインなど他国にも広がっています」(同)

 日本でも、2016年に「Choosing Wisely Japan」が設立されている。前出の小泉所長はその代表、徳田医師は副代表である。

 600項目に及ぶそのリストの中には、前出の〈風邪に抗生物質は使わない〉なる項目はもちろん含まれているが、それ以外にどんな例が挙げられているのか。多くの人に馴染みの深そうなケースをピックアップし見ていきたい。

(2)へつづく

2020年4月2日掲載

特集「2億円の新薬も保険適用! 国を破綻させる『ムダな医療』前篇」より

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