英語の早期教育、本当に必要? 中途半端な「セミリンガル」を生む恐れ 韓国の二の舞に

国内 社会 週刊新潮 2020年3月26日号掲載

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「セミリンガル」になる恐れ

 カミンズ教授は、バイリンガル研究において、「子どもの第二言語能力は第一言語能力によって決まる」という理論を打ち出しています。第一言語(母語)が十分に発達していれば、その能力を利用して第二言語(外国語)を習得できる。でも、第一言語がまだ十分発達していないうちに第二言語にさらされると、日常会話はできるようになっても、読み書きがきちんとできるほどには習得できないといいます。それどころか、母語の発達まで阻害され、二つの言語とも日常会話程度のコミュニケーションレベルにとどまってしまう可能性もあるのです。

 日本では二つの言語を操るバイリンガルがもてはやされますが、バイリンガルにもいろいろなレベルがあります。どちらの言語でも高度に抽象的な内容の理解や伝達ができるレベルは、「プロフィシェント・バイリンガル」と呼ばれます。反対に、どちらの言語も中途半端で、思考の道具としての母語を喪失した状態が「セミリンガル」です。幼少期の英会話偏重教育は、日本に大量のセミリンガルを生み出してしまう危険があります。

 しばしば“アジアの優等生”と呼ばれるシンガポールの例も見てみましょう。青山学院大学の永井忠孝教授(言語学)によると、シンガポールでは小学校1年生から、授業時間の半分以上を英語と民族語(主に中国語)にあて、算数・数学・理科は英語で教えているそうです。その結果、バイリンガルが増えたでしょうか? 実はなんと、英語も中国語も読み書き能力の最低水準に達しない者が多いというのです。

 具体的には、英語と中国語の両方の新聞が読める、つまりプロフィシェント・バイリンガルは、人口のわずか13%しかいない。かつてのイギリス植民地で、日本より格段に英語教育に力を入れているシンガポールですら、それが現実です。

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