イランの“反政府デモ”がかなりヤバい、イラン国民とアメリカが本気で考えていること

国際 2020年1月27日掲載

  • ブックマーク

中国とロシアに楔を打ちたいアメリカ

 こうしてイランは、親米から反米に180度転換したわけだが、国王の長男はアメリカで生活している。反政府活動の象徴と位置づけられているのだ。

 AFPの記事は「レザ皇太子」としているが、ウィキペディアは「クロシュ・レザー・パフラヴィー」と表記されている。

「レザ皇太子はワシントンにあるシンクタンク、ハドソン研究所で講演を行いました。皇太子は、従来のデモと今回のデモは反政府色のレベルが異なると指摘し、『ハメネイ体制の終わりの始まり』と結論づけました。もちろん発言がイランの国民に届くことを意識したものです。アメリカは『共和制といっても自由がないでしょう。王政を復古させて自由な社会にしませんか』と揺さぶりをかけているわけです」(同・佐々木氏)

 王政復古と聞けばリアリティが乏しいように感じるかもしれないが、それこそ日本が明治維新で成し遂げたことだ。佐々木氏も「決して絵空事のシナリオではありません」と解説する。

「イラン人は伝統的に教育熱心で、中東社会でも教養人が多いことで知られています。また今でも国民の大半は親米的で、仲良くなったイラン人から家庭でのパーティーに招かれると、室内で女性はヒジャブを外し、リビングでアメリカのヒット曲をステレオで再生するのは珍しいことではありません。亡くなったパーレビ国王も、今のレザ元皇太子も、親米路線を敷き、国が平和で自由が保証されていた時代の象徴として受け止められています。イラン人がレザ元皇太子の帰国を歓迎しても不思議はないのです」

 もし実現すれば、世界情勢が一変するのは間違いない。

「アメリカはシェールオイルの発掘で産油国となりましたが、採掘可能な量は5年分と言われています。アメリカが世界で覇権を握るためには、中東の原油を安定して輸入できる体制は不可欠です。サウジの原油埋蔵量も少なくなってきた今、アメリカは手傷を負いながらイラクを自国の影響下に置きました。当然ながら次はイランです。イランが親米路線に転換すれば、従来は密接な関係にあったロシアと中国に楔を打つことも可能です。そこまで見据えてアメリカがイランに圧力をかけているのは、間違いないでしょう」(同・佐々木氏)

「あのトランプ大統領に、そんなビジョンがあるはずがない」と思う方も少なくないだろう。確かに大統領本人は知性派ではないかもしれない。だが、アメリカの外交スタッフは全く違うという。

「アメリカという国はやはり凄いもので、世界中の専門家が『アメリカで研究をしてみたい』と集まってきます。それは外交でも同じです。全米には世界トップクラスのシンクタンクがいくつもあり、正確で卓越した状況分析を行い、政権に外交の政策提言を行っています。たとえトランプ大統領の知性にやや問題があったとしても、アメリカは二手先、三手先を読んで対イラン外交を考えています」(同・佐々木氏)

 佐々木氏によれば、今年はイランが国際社会に大きな影響を与える可能性がある1年になるという。

週刊新潮WEB取材班

前へ 1 2 3 次へ

[3/3ページ]