2000年に「トランプ大統領」を予言していたアメリカの「天才集団」

国際 2016年5月30日掲載

 伊勢志摩サミットにやって来て、そのあと広島で「歴史的訪問」を果たしたオバマ大統領。残りわずかの任期に、もっぱら“レガシー”作りに余念がないといったところだが、「そんなのどうでもいいよ~」というのがアメリカ本土の偽らざる本音。もちろん話題の中心は不動産王ドナルド・トランプ氏である。ワシントン特派員が言う。

「共和党の指名を確実にしたトランプですが、本人もここまで来るとは思っていなかったのでしょう。7月の党大会での正式指名にむけて、最高裁判事の人事案や貿易政策など、次々に具体的な提示をし始めた。今後、副大統領に誰を指名するかで、伸び悩むヒラリーを破る可能性だって大いにあります。元アラスカ州知事のペイリンはともかくも、元下院議長のギングリッチの名前も挙がっていますから、予断は許しません」

 もちろん、「トランプ大統領」誕生に至るまでには、最後2カ月の本選を民主党候補と戦う必要があるワケで、そこには若干の懸念材料もあるという。

「トランプは今まで自前の資金で指名争いを戦ってきましたが、国を二分する本選ではそうはいかない。そのためには共和党が従来抱えてきたパトロンを味方にしなければなりません。しかし話題のコーク兄弟など、富裕層はトランプと距離をとる傾向にあるし、トランプ自身も過去の予備選で彼らを批判してきました」(同)

 という米大統領選の下馬評は、いつまでやっても尽きないところなのだが、そもそものところ、トランプがここまで勝ち抜いてきたところにこそ、尽きない理由がある。しかも大手メディアにとどまらず、ハリウッド俳優、作家、その他モロモロのオピニオンリーダーたちが、一斉にトランプ批判を繰り返しているにもかかわらずにだ。一年前の今ごろ、果たして誰がこの事態を予想したというのか!

 すると、さる在米ジャーナリストがこんなことを指摘してくれる。

「少し前からネットを中心に凄い話題になっているんですよ。“トランプ大統領”を予言したアニメがあるって……『ザ・シンプソンズ』って知ってます?」

『ザ・シンプソンズ』――残念ながら日本の地上波ではほとんど放映されていないが、衛星やケーブルチャンネルでは、確実にファンを獲得し、ひと頃は清涼飲料水のCMキャラクターにもなったアニメである。黄色い肌にギョロ目の、ずいぶんとデフォルメされた姿を思い浮かべれば、きっとどこかで見ているハズである。アメリカでは1989年から今も放映が続く、大人気番組である。で、その『ザ・シンプソンズ』がどうしたというのだ?

「それがですね、2000年3月に放映した回、主人公一家の女の子(リサ)が、未来の世界で大統領になるって話があって、そこで先代の大統領がトランプだったというクダリが出てくるんです。トランプ政権時代のアメリカは“最悪”の財政状況で、それを救うのが女性初の大統領、“リサ”っていう展開です」

YouTube「Animation-Domination」より

 1年前に予想できなかった事態が15年も前に、しかもトランプがお茶の間の人気者?となるNBC番組「アプレンティス」(2004年~)に出演し始める前というから、慧眼というよりも、もはやオカルトである。が、この予想から、『ザ・シンプソンズ』についての別の側面に話題が及んでいるという。

「『ザ・シンプソンズ』って、風刺の強い、毒っ気のあるアニメですが、アメリカでは『サザエさん』のような国民的番組なんです。したがってファンもメチャクチャ多いのですが、そのファンですら、殆ど知らなかった“秘密”が、この番組にはあったのです。というのも、このアニメの脚本家たちの中に、ハーバード大学を卒業した数学博士が何人もいて、番組に数学ネタが山ほど盛り込まれているというんです。やっぱりハーバード出たヤツらは、考えることが違うわ、っていう評価なんです」(同)

 そして、その詳細を教えてくれるのが、人気サイエンスライター、サイモン・シンの最新作『数学者たちの楽園――「ザ・シンプソンズ」を作った天才たち』(新潮社)である。この本は彼らが『ザ・シンプソンズ』に隠した数学の“小ネタ”“なぞかけ”を次々に解き明かすものだが、もちろん話題は数学のみにとどまらない。

「ハーバード大だから凄いというのもあるかもしれませんが、見方を変えれば、そんな才能を持った人たちが大勢、何の迷いもなくアニメの脚本家になっているところにアメリカの力というか、恐ろしさを感じますね。なにしろ、あのトランプを大統領にしかねない国なのですから」

デイリー新潮編集部