邦楽のYouTubeに英語コメントがズラリ 80年代のシティポップが大人気のワケ

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言語の壁はなく、良い曲は良い

 鹿野氏によれば、とくに日本のロックは中国での評価が高いという。

「世界的にはロックよりもラップやソウルが主流になっているのですが、中国は日本と同じく、ロックバンドが人気。特にインディーズ的な要素を持っているオルタナティヴなロックが人気を集めている珍しい国です。しかも日本のロックにとって中国は特異なマーケットです。日本のライブハウスでは200名ほどしか観客が入らないバンドが、中国では2千人収容できる会場で、しかも2デイズ公演できたりすることもあるのです。The fin.、ミツメなどは、自分が知る限りでは、日本より中国でのライブのほうが観客が入っています」

 ただ、どれだけ海外で人気を博しても、そのまま日本での人気には繋がらないのも面白い。

「たとえば『ONE OK ROCK』(ワンオクロック)は海外でも、日本でも人気です。でもそれは、海外で有名だから日本で人気なわけではありませんし、日本で人気があるから海外のファンが増えたわけでもない。単純に、ワンオクの歌を良いと思うファンが海外にも日本にも多かった。何よりもバンド自身が日本と海外に、それぞれまっすぐ向かい合って音楽を作り、ツアーをしていることが大きいと思います。そういった音楽やアーティストに対して、国や人種は関係なく、良い音楽は良い、と一人一人が判断する時代になってきているのだと思います。もちろん、そのムードを作った最大の要因はネット、SNSです」

 これまでは海外に邦楽が広まらなかった大きな理由に、言葉のハードルが挙げられることが多かった。しかしYouTubeやSpotify、Apple Musicの普及で、音楽がより身近になり、「英語がわからなくても洋楽を聴くように、日本語がわからなくても邦楽を聴いてもらえる時代になった」と鹿野氏は話す。

 今日もYouTubeの邦楽動画には「日本語がわからないけどこの曲が好き」という外国語のコメントが寄せられているだろう。

取材・文/奥田壮(清談社)

2020年1月19日掲載

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