ワンス・アポン・ア・タイム・イン・巨人軍(ジャイアンツ)第1回 さらば昭和の読売巨人軍

中溝康隆 ワンス・アポン・ア・タイム・イン・巨人軍 スポーツ 野球 2019年11月21日掲載

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「王・長嶋の時代はなぁ」と遠い目をするオールド・ファン、「ゴジラ松井までは」追っかけていた団塊ジュニア世代、そして、いつの時代にも存在するアンチ巨人……しかし、その誰もが、いまだに巨人軍の“昔日の面影”を追っている――。

「むかーし、むかしの物語」もいいけれど、今のリアルなジャイアンツの姿を、はたしてどれだけの人が知っているのだろうか? G党No.1野球ライターが、選手、監督・コーチ、球団・球場、ファンを切り口に「令和の巨人軍」の実像に迫る!

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「巨人の4番って、誰?」

「参加するのがジャイアンツ」

 2019年11月3日付スポニチ1面にそんな見出しが踊った。勘違いしないで欲しいが、秋の大運動会への参加とかそういうシーズンオフのほのぼのネタではなく、原辰徳監督のFA戦線への参戦宣言である。

「FAしたら、やっぱり参加するのがジャイアンツ。そうしないとFAが駄目になる。FAというのは選手にとって名誉なこと」

 この記事を読みながら思った。「ジャイアンツらしさ、巨人らしさってなんだろうか?」と。93年(平成5年)にFA制度が導入されて以降、落合博満から始まり、昨オフの丸佳浩まで計26名が巨人へFA移籍してきた。この補強路線にはG党の間でも賛否が分かれる。19年の5年ぶりVも丸や山口俊の働きが大きかったし、FA込みで楽しむのが今のプロ野球というクールな肯定派の意見もあれば、たとえ優勝できなくとも生え抜きの若手を育ててほしいと願う“若手原理主義”のファンもいる。プロ野球は政治じゃなく娯楽だ。そこで白黒をつける必要はないし、最終的には「ラーメンとパスタどっちが好き?」的な個人の好き嫌いの問題で正解はないだろう。

 そして、そういう補強路線の巨人を嫌う他球団ファンも当然多い。最近はあまり聞かなくなってきたが“アンチ巨人”と呼ばれる層である。息を吐くように巨人批判ネタを書き続ける「日刊ゲンダイ」や「夕刊フジ」といったタブロイド紙を含め、いまやプロ野球界にとってこのアンチ巨人の方々は貴重な顧客だと思う。だって、2019年に関東近郊に住んでいると、日常生活でプロ野球が話題になることは本当に少ないから。令和の世間は、もはや巨人を嫌ってくれすらしないのである。あらゆるエンタメにおいて、称賛されたり非難されたりブーイングを浴びている内はまだ大丈夫だが、スルーされ出したら危険信号だ。
 自分が会社勤めをしている頃は、ポストシーズンの時期にまとまった有給を申請していたが、その時期にクライマックスシリーズや日本シリーズがあることを知っている最低限の野球の知識を持つ人は社内にほんの数名だった。

「巨人の4番? ゴジラ松井はもういないし、阿部?」

 そんな反応が世間のリアルだ。19年限りで引退した阿部慎之助は、まだ毎晩地上波ナイター中継があった長嶋巨人のラストイヤー2001年にプロデビューしている。やはりテレビをつけたら、いつもナイターをやってる地上波テレビ中継の存在は大きかった。現代はBSにCS放送、スマホやタブレットの動画配信とそれぞれのライフスタイルに合った方法で観戦できるが、選択肢が増えるということは、同時に分かりやすい“大衆性”を失うということでもある。

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