神戸「小学校イジメ教諭」の実名 文科省の怠慢で次はあなたの子どもの教壇に立つ可能性

国内 社会 週刊新潮 2019年10月31日号掲載

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希死念慮

 30代の柴田祐介教諭についても、関係者がいう。

「校内では日常的に、関口先生の背中を肘でぐりぐりし、足を思いきり踏み、指導案に落書きをしたりもしたそうです。蔀先生がキムチ鍋の素などを飲ませたときも、柴田先生は一緒にはしゃいでいたし、今年6月、蔀先生が携帯電話を隠したときは、結局、柴田先生が隠しもっていたとのこと。暴言もひどく、“お前見てたらイライラする”“お前みたいなやつ、いじってんねんから、感謝しろ”などというほか、関口先生が交際している女性についても、“やりまんと付きあってるもんな”“俺、お前の彼女とエッチした”“お前の女、すぐ股開くで。軽い女やから”なんて、ひどいいいようだったようです」

 最後に、やはり30代の佐志田英和教諭だが、

「蔀先生と同様、関口先生のカバンに氷を入れていました。今年4月の須磨区の懇親会の際には、関口先生は後ろから強く殴られたそうです。単独でのイジメはほかの人より若干少なくても、佐志田先生も一緒になって関口先生をいたぶっていたわけです。毎日、みんなで関口先生のことを“性病口”“くず口”“うんこ口”“ごみ口”などと呼んでいたのですから」

 その結果、関口教諭は今年4月ごろから、嘔吐、睡眠障害、動悸、呼吸困難、チックなどの症状が出るようになったという。そして夏休みが明けたとき、

「先生は9月2日、始業式に登校できず、直後に先生のお兄様からご依頼を受けたのです」

 と話すのは、代理人の奥見司弁護士である。関口教諭は自殺しかねない状況だったそうだ。

「夏休みが終わり、明日からまた子どもたちに会えるのを、関口先生はとても楽しみにしていました。しかし、またあのイジメの日々が始まると思うと、体が拒否反応を示すというのです。具体的には、過呼吸がひどく、自分の意思で話したり座り続けたりすることもできない状態です。顔面の一部は引きつり、死を願う希死念慮もあるということで、2日にただちに入院すべきという診断が出ました。いまもまだダメージが大きく、通院治療中です」

 そして、関口教諭から聞いたイジメの話は、

「イジメの範疇を超えていると思われる内容が多々あったので、刑事告訴や国家賠償請求も視野に入れて話をしてきました。神戸新聞のスクープでこの件が知られ、警察にも“加害教師を逮捕すべきだ”という電話があったみたいです。そうした流れもあって警察に相談に行き、10月11日に被害届を提出、当日受理されています。国家賠償請求については関口先生の意思次第ですが、先生がなにより一番望んでいるのは、もう一度教壇に立つことです」

 先の保護者がいう。

「私も子どもも、関口先生に早く会いたくて仕方ないです。子どもはかなりショックを受けたのでしょう。頭痛や腹痛で学校を休んだことがあり、いまは通っていますが、“関口先生がいないから学校がつまらん”といっています。できることなら、こんなこと経験せずに育ってほしかった」

 念のために書き添えておくが、もちろん被害者は関口教諭だけではない。同様のイジメを受けていた男性教員も、セクハラ被害を受けていた女性教員も確認されている。

また教壇に立てる

 奥見弁護士の話にもあったが、それらの被害も含め、

「県警は立件する方向で動いています」

 と、兵庫県警担当記者はいって、続ける。

「被害者が須磨署に被害届を出すと同時に、県警捜査1課が入り、須磨署と合同で捜査を開始しました。1課は神戸新聞が報じる前から事案を把握し、社会的反響が大きいはずだと構えて準備していたのです。容疑は暴行、傷害、強要、器物損壊などいくつかありますが、カレーを食べさせた件には動画という証拠があり、暴行に問えるでしょう。車の屋根に乗っている写真などから、器物損壊での立件も可能でしょう。書類送検は間違いなくされるはずです。また、加害教員が女性教員に男性教員の陰部を握らせた件で、ほかの教師が被害届を出せば、強要は間違いなく、わいせつ関連の罪状も加わる。そうなれば、加害者の身柄が捕られる可能性も十分あります。いずれにせよ早ければ年度内に立件されるでしょう」

 保護者が望むように刑事罰が下り、加害者が一生かけて償うことになるか。ところが、今度はあなたの子どもの前に立つ可能性すらあるという。文部科学省教育人材政策課に尋ねると、

「教員免許は一度失効しても、大学の教職課程で取得した単位は有効なので、失効期間がすぎてから更新講習を受け、書類申請すれば、新たに取得することが可能です。たとえば、自治体の教育委員会によって懲戒免職されると剥奪されますが、3年経つと再取得できます。ただし禁錮刑以上の刑を受けた場合は、失効期間は刑期プラス10年、罰金刑だと5年になります」

 要は、長い禁錮や懲役刑にでも処せられないかぎり、すぐにまた教壇に立てるのだ。むろん、各自治体が任用するかどうかは別問題だが、こんな例もあった。

 一昨年、愛知県知立市の臨時講師が女児数人へのわいせつ行為で逮捕されたが、実はこの男は2013年に、埼玉県で児童ポルノ事件で逮捕され、停職処分を受けていた。知立市が知らずに採用していたのだ。これを受けて文科省は、教員の「処分歴共有システム」を構築するはずだったが、

「そもそも処分歴を記載することは、個人情報保護の観点から難しいのです。そこで、教員免許が有効か否かの情報を一元化するシステムを考えましたが、予算の都合もあって別のシステムを整え、本年度から運用可能になっています」(同)

 よほど有効なシステムが構築されたのだろうか。

「教員免許が失効すると官報に掲載されます。その情報を文科省で一元化し、各地の教育委員会の求めに応じて提供できるシステムです。各教委は、過去に懲戒免職になったり禁錮刑以上の刑を受けたりした教員の情報を共有できます。ただし、3年以上前の情報は掲載されません。また、どういう事案で処分されたかも掲載されません」

 殺人でも働かないかぎり、再び教壇に立つことは、いくらでもできるようだ。

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