「教育虐待」にのめり込んでしまう親と、その予備軍に捧げるアドバイス

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癒えないトラウマ

 また、高学歴でプライドは高いが自己肯定感が著しく低いひとがあなたの身近にいないだろうか。もしかしたらそのひとも、教育虐待の影響をいまだに引きずっているのかもしれない。

 東京都の郊外で生まれ育った知佳さん(仮名)は、小学生のころから毎日勉強を4時間、ピアノを2時間やらされていた。ピアノで間違えると、怒鳴られ、叩かれた。近所から「ピアノよりも怒鳴り声がうるさい」とクレームが来ることもあったが、母親は「嫉妬しているのよ」と言って取り合わなかった。

 学校のテストの点が悪いと叩かれた。でも、いい点数を報告しても「勘違いしないで。テストでいい点がとれたのはあなたの力じゃない。お母さんのおかげなのよ。わかってる?」と言われて怒られた。友達との交換日記も禁じられ、成績の悪い子とは、いっしょに遊ぶことさえも許されなかった。

 中学生になると、高校受験勉強に加え、英語検定、漢字検定、ピアノ検定のための勉強までさせられ、一時期は身体の震えが止まらなくなった。自律神経失調症だったのだろう。それでも知佳さんは通院することさえ許されず、代わりに母親はこんな言葉を吐き捨てた。「あんたはその程度の人間だったのね。これだけやってあげてるのに、残念よ」。知佳さんは自殺も考えた。「ここで人生が終わっても、私は悔しくない」。母親が悔しがる姿を見てやりたかったのだ。

 大学生になり家を出た。家を出るのもたいへんだった。中学受験塾に就職した。「子どもの受験に命をかけているような母親も多い。そんな母親に、『あなたの受験じゃないんだよ。子どもの受験なんだよ』と伝えたかった」。

 自分の負の体験を仕事に活かすことで、過去を乗り越えられたと思っていた。しかし、結婚したあと、異変が起きた。自分が親になることを想像すると、過去のつらかった感情があふれ出したのだ。ベッドの中で「子どもなんていらない!」と突然叫んでしまった。親子関係そのものがトラウマになってしまっていたのである。

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