サンマが不漁続きで「秋の味覚」じゃなくなる恐れあり?

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〈さんま、さんま さんま苦いか塩っぱいか〉。詩人・佐藤春夫は「秋刀魚の歌」で秋の味覚の代表をこう詠んでいた。が、近年の不漁続きで、旬の秋には気軽に口にできなくなる恐れもあるという。

 サンマ漁はこれまで8月から12月までと決まっていたが、今年から通年の操業が解禁された。全国さんま棒受網漁業協同組合(全さんま)の大石浩平専務に聞くと、

「ここ数年、日本近海での漁獲量が減っていたので、昨年まで3年間、5月から7月の操業を試験的に行っていました。それが今年から本格解禁されたわけです」

 サンマが沢山獲れて、安くなるに越したことはない。本格解禁で安心して良いのか。大石専務が続ける。

「5月からの3カ月間の総漁獲量は5003トンで、昨年と比べると6割しか獲れなかった計算。不漁と言われた一昨年に続いて、少ない漁獲量です。日本近海で獲れなくなった明確な理由は、判明していません」

 8月に入っても、漁獲量に回復の兆しは見えていない。全国紙の北海道支局記者によれば、

「今月10日にサンマ漁が解禁されましたが、9年連続水揚量日本一の根室市の花咲港でも15日までの漁獲量はゼロ。前代未聞の大不漁に漁師たちも、“これじゃあ、赤字操業だ”と嘆いていました」

 このまま不漁が続けば、価格に跳ね返るのは確実だ。

 サンマは、1匹100円未満の大衆魚と思われがちだが、さに非ず。総務省統計局が行った過去4年間の価格推移を見ると、毎年8月と9月は1匹100円を超えている。ちなみに、豊漁の昨年9月は139円で、不漁だった一昨年の9月は148円だった。

「総務省の数字は全国平均です」

 こう語るのは、都内にあるスーパーの鮮魚担当者だ。

「そんな値段で売っていたら儲けがほとんどありません。8月から9月に限っていえば、毎年1匹200円近い値段で売っています。良い物だったら、200~300円の値をつけたこともあります。今後は、漁獲量により値段も乱高下するでしょう」

 こうした懸念を払拭するかのように先の大石専務は、

「本格的な漁は、まだ始まったばかり。毎年、9月から10月にかけて漁獲量は増える傾向なので、初冬には価格も安定すると思います。高くなったといっても、サンマは他の魚に比べれば、まだまだ安いですよ」

 というのだが、秋口のサンマは、家計には苦くて塩っぱい味になりそうだ。

週刊新潮 2019年8月29日号掲載

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