男子校出身の32歳が突然「フェミニズム」に関心を抱いた意外な理由

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 これまで女性の生きづらさにスポットを当ててきた。しかし、もしかすると私が男性という存在をよく理解していないから生きづらいのかもしれないと推測を立てた。特別な根拠はないが、以前、男性学を研究している社会学者の田中俊之先生を取材した際「男は小さい頃から競争社会で生きているので、弱みを人に見せることが苦手で助けを求められない」と仰っていたからだ。そんなつらさを女性が汲み取ってあげられたら、もしかすると男女共に生きやすくなるのかもしれないと思ったのだ。しかし、本当のところは分からない。男性という生き物は私の中でほぼ宇宙人だ。

 中高の頃はスクールカースト底辺で男子からバカにされていたので距離を置いており、大学は女子大で男性と関わることがほとんどなかった。恋愛経験も乏しく、4歳以上年上の男性としか親密な関係になったことがないため、同年代の男性は日々何を考えているのか謎に包まれている。そこで、同年代の男性は女性に対して、また社会に対してどのような価値観を抱いているのか気になり、今回はフェミニズム本も手掛けている同い年(1987年生まれ)の男性編集者、原口翔太さん(仮名)に話をうかがった。

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ホモソーシャルのど真ん中にいた青春時代

 フェミニズム系の本を同い年の男性が編集している。まずそのことに興味がわいた。昔から男女の権利について考えていたのかと思いきや、驚くべき変遷を語ってくれた。

「高校が男子校だったので、ホモソーシャルの世界のど真ん中にいました。エロ本の回し読みは中学の頃からあったし、若い女性教師を誰かがからかうのを『あ〜面白いなぁ』という感覚で見ていました。

 そんなノリで大学に進学したら、語学系の大学だったこともあり、8割が女子だったんです。そこで、とにかく女子たちに怒られました。『きちんと風呂に入れ』とか『服装がだらしない』とか『遅刻するな』といった理由で。

 男性同士だったらそんな細かいこと気にすんなってなるので、当時は『うるさいな』と思っていました。でも、そのような経験をせずにホモソの感覚のまま大人になっている男性もいると思います。

 最近、友人の結婚式に参列し、ホモソのノリの友人の姿を見てしまうと、そいつがいいヤツであっても、今の僕からすると人の顔面を踏みつけても平気な人たちに見えることもあります。でも、そこで僕が職業上フェミっぽい振る舞いをすると女性の味方に見えてしまうように思えて、微妙な心境になります。僕も昔はホモソのノリを盛り上げる側だったんですけどね……」

 原口さんがフェミニズムに興味を持ったのはたまたまだった。フェミニズムというジャンルは知っていたが、それが自分に関係してくることとは全く思っていなかったという。文章の面白い書き手を見つけ、その人の原稿を読んでいると、驚くことが多く引き込まれた。そしてこれは仕事上のコンテンツとして成り立つのではないかと思った。その予想は的中し、彼が手掛けたフェミニズム本はかなり売れている。

「例えば、女性は仕事が終わった後にデートや遊びに行く際に一度着替えるということを初めて知りました。男性だったら仕事帰りにスーツのまま遊びに行きますが、なぜ着替えるのか訊いてみると『職場に本気の服を着ていって会社の同僚男性から論評されるのが嫌だ』ということでした。僕も『そのTシャツダサい』と言われたら確かに嫌ですが、そこまで気にしないと思うんです。その感じ方に男女で差があること自体が面白いなぁと」

 職種にもよるが、女性は職場において「オフィスカジュアル」を強いられる傾向がある。私も会社員時代、私服は少しロリータっぽい甘めの服装を好んでいたが、仕事着としては主にGUで安く無難な服を買って着ていた。でも、当時はヴィジュアル系バンドの追っかけをしていたので、仕事後にライブに行く際は予め着替えを持って出社し、仕事後、お気に入りのワンピースに着替えていた。

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