男子校出身の32歳が突然「フェミニズム」に関心を抱いた意外な理由

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男性は「茹でガエル」

 私の場合、元々好きな服装が事務職としてはそぐわない格好だったので自重しており、男性からの論評は考えたことがなかった。でも、同じ環境で働く上で、男性からの論評を気にしている女性がいる事自体、男性に権力がある証だと原口さんは主張する。

「女性は住む場所も安全面を考えないといけないし、服装も男性の目を気にして仕事後に着替える。化粧品にもお金がかかる。多くの男性って弱者になったことがないんです。

 でも、老人になると誰でも弱者になる。その上で老後生き生きしている人は今まで地道に関係性を作ってきた人です。だから、弱者について理解するならフェミニズムを学ぶことが唯一のチャンスだなと。

 そして、自分が今までパワーのある側にいたことに気づきました。『あのとき、あの女性に嫌な思いをさせてしまったな』と思うこともあります。

 男性は『茹でガエル』って言うじゃないですか。要は、熱湯の中に放り込まれたカエルはすぐに逃げ出して助かるけど、じわじわと低音で温められて茹でられていったカエルは自分が苦しんでいることに気づかないまま死んでしまう。

 権力を持っている男性の場合、自分も含め、自分が今苦しいということにあまり気づけないのではないかと思うんです。女性に関しては悲しいことに子どもの頃から抑圧される環境にあるので、何かしらの圧に気づきやすい」

 男女関係で男性の方が構造上、権力を持っている。原口さんにそう指摘されるまでそれは当たり前過ぎて気づいていない自分がいた。偶然だが、今まで仕事相手は男性が多かった。ライター自体は女性のほうが多いように感じるが、編集者やクライアントさんは男性、しかも40代以上の中高年だった。

 恋愛の指南本やモテ系の記事を読むと『男性のプライドを傷つけないような振る舞いを!』とか『些細なことでも褒めるのがモテへの近道☆』といったことが書かれている。これらのアドバイスは明らかに、女性のパワーバランスが下である。

 また、個人的に恋愛相談をした男性からは「『会う時間を作ってほしい』とか、プレッシャーをかけるようなLINEを送るのはNGだよ」と言われた。そのときは男性ってどれだけプレッシャーに弱いんだ……? と若干呆れてしまった。

 そして、原口さんが語る男女の構造に気づいてしまった途端、私の中で「男に勝ちたい」という欲求が猛烈に膨らんできた。仕事でもっと成功したい。女だけどもっともっと稼げるということを証明したい。それと同時に、今、令和だよな、いつの時代の女性の話だよ、現代はウーマンリブなんかじゃない、と思った。

 でも先日、東大の入学式の祝辞で上野千鶴子先生は男女が不平等であることを述べた。それに喝采する人がいる一方、「わざわざめでたい日に説教するなんて」と非難した人もいた。賛否両論が巻き起こった祝辞であったが、なぜ東大がこのタイミングで上野先生を呼んだのかを考えると、現代の社会を見通した東大側の策略と思えてきた。

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