京アニ放火「DNA鑑定」を依頼された被害者家族の悲痛な叫び

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 夢を抱いて京都アニメーションの門を叩き、日々、仕事に打ち込んできた若者たちの明日は一瞬にして奪われた。何の落ち度もなく、面識すらない被害者を事件に巻き込んだ犯人の罪は果てしなく重い。

 いまだ安否が確認できない大野萌(めぐむ)さん(21)の祖父・岡田和夫さん(69)が、事件翌日に胸中を明かした。

「萌は幼い頃からアニメや漫画が大好きで、中学を卒業する頃にはアニメの専門学校に通うか悩んでいました。結局、自信がなくて地元の高校に進学したんですが、夢を諦めきれず、2年前の春に憧れの京都アニメーションに入った。当初はアシスタントでしたが、ようやく最近、作画担当になって3階で働くようになったんです。それはもう喜んでいました。ついこないだも“映画のエンドロールに名前が載ったの”って」

 だが、無情にも萌さんは爆発事件に巻き込まれてしまう。彼女が働いていた「3階」は、第1スタジオのなかでも最も多くの犠牲者を出した場所だった。

「事件を知ってすぐに、私の娘が現地へと駆けつけました。娘が孫の名前を伝えるとスタッフの方は“残念ですが、もうダメかもしれません……”と。まもなく泣きじゃくった娘から連絡を受けました」

 焼け焦げて損傷が激しい遺体は個人の判別がつかず、母親はDNA鑑定への協力を求められたという。

 家族はいまも警察からの連絡を待ち続けている。

「あの子は昨日まで生きていたんです。ほんの昨日まで生きていた。私の髭剃りが壊れたら、お給料で電気カミソリをプレゼントしてくれる自慢の孫でした。私が萌の代わりに逝っても構いません。代われるものなら代わってあげたい」

 取材の途中、言葉に詰まった祖父の両目は大粒の涙を湛えていた。

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