京アニ放火「DNA鑑定」を依頼された被害者家族の悲痛な叫び

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「分かっているんです」

 津田幸恵(さちえ)さん(41)の父・伸一さん(69)はこう語る。

「娘は京都アニメーションに就職して20年ほどになります。あの会社ではかなりのベテランで、ずっとセル画に彩色して仕上げる作業に携わってきました。『クレヨンしんちゃん』のクレジットに幸恵の名前が入った時は、亡くなった家内と一緒に“出とる!”って言って大喜びしましたよ。幸恵と最後に会ったのは2カ月前。“今年はお盆も正月も帰ってこられへん”と言ってましたね。忙しくても、ひたすら好きな仕事を楽しんでいる様子でした」

 事件当日は幸恵さんの妹が京都に急行したが、現場は混乱を極めており、安否に関する確かな情報は得られず仕舞いだった。そこで翌日、兵庫に住む伸一さんが京都へと向かった。

「携帯で連絡が取れず、病院のリストにも名前はない。警察からもDNA鑑定を依頼された。ええ、もう分かっているんですよ、幸恵が亡くなったことは。いまは目の前のことを淡々とこなすしかありませんが、悲しさだけが募ります。警察から連絡があれば京都に足を運ぶつもりです。ただ、事件のことがずっと頭から離れなくて、車を運転する自信がないんです」

 この取材の後、7月26日に幸恵さんの死亡は確認された。

 未曾有の事件は被害者だけでなく、無辜(むこ)の家族からも明日を奪っていた。

週刊新潮 2019年8月1日号掲載

特集「新聞・テレビが報じない闇! 京アニ『68人殺傷犯』41歳の『黒い履歴書』」より

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